最高裁判所第一小法廷 昭和25年(れ)1187号 判決 1952年4月24日
主文
本件上告を棄却する。
理由
被告人本村博俊弁護人上条馨の上告趣意について。
所論公判請求書記載の事実「被告人が昭和二三年四月一〇日省線高崎駅において進駐軍物資であるチョコレート三ポンドを所持し、政令一六五号違反の事実」をこれに照応する第一審判決の第二〇の判示事実に対照すると目的物の名称と罪名とが異なるだけであって犯行の日時場所、犯人及び目的物の数量において符合し、しかも判決挙示の証拠によれば目的物は「チューインガム」であることが認められるのである。そして不法所持の公訴の効果はその不法所持を為すに至った収受行為にも及ぶものと解すべきであるから、所論公訴事実と判示事実との間には基本的事実関係において同一性を欠くものということはできない。されば両者の間に同一性なきものと断定し、従って原判決を以て審判の請求を受けない事件について有罪の判決をしたものと速断し、かかる違法あることを前提として立論する違憲の主張はその前提を欠き刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらないし同四一一条を適用すべきものとも認められない。
被告人本村博俊の上告趣意について。
論旨は結局量刑不当の主張と解せられ刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらないし、同四一一条を適用すべきものとも認められない。
被告人大友国守の弁護人妹尾晃の上告趣意について。
論旨は原判決には判決遺脱の違法あるかさもなければ被告人に不利益な予断の下になされた違法あるもので、憲法三七条一項に違反するとの主張に解される。しかし所論憲法の規定は組織構成に偏頗の虞のない裁判所の裁判を受ける権利を保障する趣旨の規定であって、所論のような被告人の側から見て内容上不利益な裁判を受けない権利を保障しているものでないことは、当裁判所の判例とするところである。されば論旨の実質は単なる訴訟法違反か量刑不当の主張に帰し、刑訴四〇五条に定める上告適法の理由とならぬし、同四一一条を適用すべきものとも認められない。
被告人石脇喜久夫同大友国守同田上義明弁護人西村定雄の上告趣意について。
論旨は結局単なる量刑不当の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由にあたらないし同四一一条を適用すべきものとも認められない。
よって刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条に従い裁判官全員一致で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)