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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(オ)293号 判決 1953年12月24日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士弘重定一の上告理由について。

第一点 原判決は、適法な証拠に基いて、借地法の適用を受くる建物所有を目的とする賃貸借に変更したものと判断したのである。原判決全体の趣旨に徴するときは、本件の右賃貸は、所論のように借地法第九条にいわゆる「臨時設備其ノ他一時使用ノ為借地権ヲ設定シタルコト明ナル場合」とは認められなかつたのである。それ故、原判決には、所論の審理不尽の違法があつたものと言うことはできないので、論旨は採るを得ない。

第二点 所論の借地法一一条の規定は、前記一時使用にあらざる建物所有を目的とする賃貸借にはすべて適用されるのであつて、所論のごとく同条の意義は、「当事者が合意した建物が、永続性のものであることを前提として同法が賃借人に与えた利益に反することをいう」と狭く解すべきものとは思われない。それ故、原判決には所論の違法があるとは認められないから、論旨は採ることを得ない。

第三点 所論は、結局本件賃貸借を借地法の適用を受ける通常の借地関係と認定したことの証拠判断ないし事実認定を非難するに帰し、上告適法の理由とは認め難い。

第四点 所論は、「借地法に所謂建物とは成規の手続を経て建築し、家屋台帳等公の帳簿に登録され課税の対象となつておるものと解すべきである」と主張する。しかし、借地法にいわゆる建物を、所論のように狭く解しなければならぬ理由はなく、建物の意義は一般通念に従つて解するをもつて足るものとしなければならぬ。

課税のための公簿に記入されているかどうかは、課税に関する行政法上の問題であつて、借地法上の建物の意義を定めるについては別段関係のない事柄である。論旨後段は、原審の認定に副わない事実を前提とするものであるから、事実認定の非難に帰する。そればかりではなく、本件訴は賃貸借期間の満了を原因とするものであるから、当法律審において新に契約解除を主張することは許されないのである。それ故、本論旨は採ることを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、全裁判官の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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