大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和26年(オ)894号 判決 1953年12月17日

島根県美濃郡小野村大字飯浦一〇一八番地

上告人

長尾治三郎

同県同郡同村大字小浜四四四番地

上告人

三浦義城

右両名訴訟代理人弁護士

石川忠一

山口県大島郡蒲野大字東三蒲第二一九六番地の二七

被上告人

株式会社興洋造船鉄工所

右代表者代表取締役

深津薫

右当事者間の約束手形金請求事件について、広島高等裁判所松江支部が昭和二六年一一月二一日言渡した判決に対し、上告等から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人等の負担とする。

理由

上告代理人弁護士石川忠一の上告理由について。

原判決の是認した第一審判決が、本件約束手形の振出人である上告人長尾治三郎、並びにその手形保証人である上告人三浦義城の両名は、連帯して被上告人に対し、本件手形金二六万円並びにこれに対する本訴状送達の翌日である昭和二六年五月一一日以降完済に至るまで年六分の損害金の支払を為すべき旨の判決をしたことは、所論のとおりである。しかし、所論は、結局上告人等が連帯ではなく各自右手形金並びに損害金の支払を被上告人に為すべきよう是正を求めることに帰するのであり、債務者にとつて独立の債務が連帯債務に比し総体的に見て不利益であること勿論であるから、本件について、所論は結局上告人等の為めに不利益な主張というべく従つて、適法な上告理由として採ることができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条九三条に従い、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

昭和二六年(オ)第八九四号

上告人 長尾治三郎

被上告人 株式会社興洋造船鉄工所

上告代理人弁護士石川忠一の上告理由

第一点 原判決(第一審判決)は、その主文に於て金二十六万円並びにこれに対する年六分の割合による金員の支払につき被告等(本審上告人等、第二審控訴人等)に連帯責任あることを判示している。

然れども、上告人長尾治三郎は本件約束手形の振出人であつて、上告人三浦義城は本件約束手形の保証人である。而して手形保証については手形法第三十二条第一項及び同法第四十七条第一項の如き特別の規定があるに徴すれば、保証人は自己の手形行為に因りその保証せられたる者と同一の責任に於て合同してその責に任ずべきものであつて、商法第五百十一条の規定は、手形の振出人とその保証人との間の関係には適用の余地なきものといわなければならない。たとえ保証人が特に手形に「連帯」なる文言を記載して手形に署名しても、その「連帯」なる文言は手形法第七十五条又は同法第三十一条その他手形法に定めてない事項であるのみならず、却て手形法第四十七条第一項の規定に反する事項であるから効力を有しないものと解さなければならない。

依つて原判決は法令に違背するものと認める。

以上

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例