最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)1533号 判決 1953年10月22日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
弁護人内谷銀之助の上告趣意第一点に引用する判例は本件に適切でない。事実審認定のごとく米軍用羊毛シャツ五梱包四百枚をトラックの上の廃品の山をかきわけ積み込み、その上方より更に廃品を被せて隠匿し共同被告人の一人はその間トラック運転台にあった事実は、たとい構外まで物件を搬出せざる場合においても、他人の占有するものを他人の意思に反して自己の支配内に移したものと認めるを相当とするから、窃盗の既遂に当るわけであって原判決には所論の違法はない。同第二点及び弁護人江村高行、同奥原喜三郎の上告趣意は、事実誤認、量刑不当の主張であって上告適法の理由に当らない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)