最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)3215号 決定 1953年11月19日
本籍
佐賀市本庄町一二番地
住居
同市八戸町三二番地
左官業
嘉村実次
明治三〇年三月一七日生
右に対する昭和二二年勅令第九号違反、職業安定法違反被告事件について、昭和二八年六月九日広島高等裁判所岡山支部の言渡した判決に対し被告人の原審弁護人豊田秀男から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人豊田秀男の上告趣意第一点は、単なる訴訟手続違背の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、記録によれば、原審では被告人に対して適法な公判期日の通知がなされ、公判期日には弁護人出頭して弁論し、被告人は同日附で裁判所に対し不出頭の届を出しているから、所論の手続違背も認められない。同第二点は、単なる法令違反の主張であつて、これまた、同条の上告理由に当らない。そして、本件犯罪(昭和二七年五月四日)に適用のある昭和二七年法律八一号により法律として効力を有する昭和二二年勅令九号第二条は、婦女に売淫をさせることを内容とする契約をした者を処罰する規定であり、職業安定法六三条二号は、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介等を行つた者又はこれらに従事した者を罰する規定であつて、その取締の目的及び違反行為の内容、性質等を異にするから、両規定は、何等特別法又は例外法等の関係がなく、後者によつて前者が適用されなくなるものではない。
よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)