最高裁判所第一小法廷 昭和28年(あ)98号 決定 1953年10月08日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
弁護人白川慎一の上告趣意第一点は単なる法令違反の主張であり、〔本件では鉱業法施行法六〇条により被告人矢頭一郎に対しては旧鉱業法九四条二項(過失責任)を、被告人矢頭高治に対しては同条項及び同法一〇四条(鉱業権者としての転嫁責任)を、それぞれ適用処断すべきであるから、その犯罪の個数は過失に因る鉱区外の侵掘行為の個数により定まるものといわなければならない。然るに事実審で認定された事実によれば、被告人矢頭一郎が(1)福吉三坑において請負人前田勇外七、八十名をして(2)福吉七坑において請負人矢頭邦輔外約七十名をして、それぞれ判示のような業務上の注意義務を怠り隣接赤池炭坑との間隔地及び同炭坑鉱区内で侵掘するに至らしめたというのであるから、二個の過失による侵掘あること明白であり、原審がこれを併合罪として刑法四八条二項を適用したのは当然であり原判決には所論のような違法はない。〕同第二点は量刑不当の主張であっていずれも刑訴四〇五条の上告理由に該当しない。また記録を調査しても同法四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同法四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎)