最高裁判所第一小法廷 昭和29年(あ)1769号 判決 1957年3月28日
本籍並びに住居
大分県下毛郡中耶馬渓村下郷区大字金吉四五二五番地
大分地方法務局下郷出張所雇
横山浩
昭和三年一二月二四日生
本籍並びに住居
同所五〇三二番地の一
農業
松本待郎
明治四二年五月一〇日生
本籍並びに住居
同所四一二五番地
農業
松原政孝
大正一〇年四月二五日生
本籍並びに住居
同所四五三〇番地
農業
横山三郎
明治三〇年二月一五日生
本籍並びに住居
同所四五四一番地
農業
横山勝
大正一一年二月二七日生
本籍並びに住居
同所六〇〇番地
農業
上杉金也
昭和五年一二月一四日生
本籍並びに住居
同所四三三四番地
農業
御堂大三
昭和四年五月一八日生
本籍並びに住居
同所四八八七番地
農業
木原勇
大正一一年三月八日生
本籍並びに住居
同県同郡同村同区大字大島七六三番地
農業兼下郷農業協同組合長
奥登
大正八年三月六日生
本籍並びに住居
同所九三一番地
農業
相良富夫
昭和三年六月九日生
本籍
同所一九六五番地
住居
同県同郡同村同区大字宮園番地不詳
下郷農業協同組合職員
梶原秀生
大正三年二月二三日生
右に対する恐喝各被告事件について、昭和二九年四月二一日福岡高等裁判所の言渡した判決に対し各被告人の原審弁護人清源敏孝から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人関原勇、同後藤昌次郎の上告趣意第一点、並びに、第三点は、違憲をいうが、その実質は、単なる訴訟法違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
同第二点は、違憲及び判例違反をいうが、原判決の判断が正当であつて、違憲といえないことは、所論引用の当裁判所大法廷の判例に徴し明らかであり、また、原判示は、引用の判例と同旨の見解に出たものと認められ、従つて所論は採ることを得ない。
同第四点中一は、事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。同二ないし五は、違憲をいうが、憲法二一条の保障する言論の自由といえども公共の福祉によつて制約を受けることの止むを得ないものであることは、当裁判所大法廷の屡々判示したところである。そして、原判決の是認した第一審判決の確定した事実関係によれば、本件恐喝の手段たる脅迫行為は、かかる制約を受くるものであつて、違法であること右判例に照し明白であるから、所論は採用できない。
弁護人清源敏孝、同橋本定、同諫山博の上告趣意第一点は、違憲をいうが、原判決の判示は、所論引用の当裁判所大法廷の判例に従つたものであると認められるから、もとより正当であり、また、所論判例はこれを変更すべき必要を認めない。
それ故、所論は、採るを得ない。
同第二点は、違憲をいうが、その実質は、単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
同第三点は、違憲をいうが、所論の表現行為は、事実審が恐喝手段として認定した一連の行為の一部を成すに過ぎないものであり、その一連の行為を全体として観察すれば、それは多衆の威力を示して相手方を畏怖せしめるに足りる脅迫行為として恐喝手段に当るものと認められる。されば、所論は前提を欠き採ることができない。
同第四点は、事実誤認、単なる訴訟法違反の主張を出でないものであり、同第五点は、量刑不当の主張であつて、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
よつて、同四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)