最高裁判所第一小法廷 昭和30年(あ)2660号 判決 1958年3月27日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人小泉英一の上告趣意について。
所論のうち憲法二一条違反をいう点は、本件文書が猥褻文書であり、本件所為に刑法一七五条を適用したことが憲法に反するものでないことは、当裁判所の判例とするところであって(昭和二八年(あ)一七一三号、同三二年三月一三日大法廷判決、集一一巻三号九九七頁以下)、所論は採ることを得ない。
その余の論旨は違憲をいう点もあるが、その実質は事実誤認、単なる法令違反の主張を出でないものであって、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(なお、本件起訴状の公訴事実の記載は、公訴事実の特定に欠けるところがあるものとは認められず、本件公訴の提起を有効であるとした原判示は正当であり、また所論は公訴棄却の申立に対する第一審判決の判断遺脱を攻撃する控訴趣旨に対し原判決が判断を与えていないというが、原判決が所論の控訴趣意を排斥したものであることは全判文から充分これを窺えるのであって、所論は理由がない。)
よって刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫)