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最高裁判所第一小法廷 昭和30年(オ)604号 判決 1956年4月05日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由第一点について。

所論は違憲をいうが、その実質は民法一条の違反を主張するに帰する。そして、原審の認定した事実によれば、被上告人は、本件家屋の明渡を受け、或いはこれを他に処分して多額の納税の資に充つべく、或いは自ら使用して利益を得んとする意図があつたものであり、また、本件転貸借は、近く予想せられる訴外今村秀之助の本件家屋退去に至るまでの間を限つてなされたものであつて、かかる事実関係の下において被上告人が本件家屋明渡請求権を行使したことは、民法一条に違反するものとは認められない。

同第二点、第三点について。

原審の認定した事実によれば、被上告人は、近く予想せられた今村秀之助の本件家屋退去に至るまでの間を限つて、その家屋の一部の転借につき、上告人の代理人に対し承諾を与えたものであつて、上告人側も当初より右事実関係を了承していたものであることがうかがえるから、上告人の転借権が、被上告人と訴外今村秀之助との賃貸借の終了により消滅するとした原判決には、所論のような経験則違背はなく、また民法一条違反も認められない。なお、所論引用の判例は、本件には適切でない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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