最高裁判所第一小法廷 昭和31年(オ)664号 判決 1958年1月23日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人弁護士栗原宰之助の上告理由第一点について。
しかし、控訴人ら(被上告人ら、被告ら)は、原審において被控訴人(上告人、原告)主張の特約は、借地法一一条により無効であるから、これに基づく契約解除も失当であると主張しているのである。されば、原判決には所論の違法は認められない。
同第二点について。
しかし、原判決は、挙示の証拠に基づき本件建物は、控訴人吉松において自己所有の建物として建築しただ一家の事情により控訴人貞次郎名義として置いたに過ぎない旨認定し、所論転貸の事実を認めなかつたものであつて、右証拠によれば、その認定を首肯することができる。されば、所論は原判決の適法になした事実認定を争いこれを前提として法令違背を主張するに帰し、上告適法の理由として採るを得ない。
同第三点、第四点について。
しかし、判決書における訴訟代理人の表示は、民訴一九一条の記載事項でないから、所論第三点は、採るを得ない。また原審判決言渡調書(記録二一五丁)によれば、原判決がその原本に基づき言い渡された旨記載されているから、同第四点も採ることができない(民訴一四七条参照)。
上告代理人弁護士梶谷丈夫、同佐藤章の上告理由第一点、第二点について。
原判決が所論本件特約を借地法一一条によつて無効であるとした旨の各判示は、いずれも正当として是認できる。そして、所論判例は、本件に適切でない。それ故、論旨は採用できない。
同第三点について。
その採用できないことは、栗原代理人の上告理由第二点について説明したとおりである。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)