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最高裁判所第一小法廷 昭和32年(あ)1190号 判決 1958年5月24日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人三輪一雄の上告受理申立理由について。

原判決は、次のごとく判示している。すなわち、「先ず、本件ビルマ米(ビルマ粳精米)が食糧管理法の対象となるものであるかどうかに付考察すると、本件ビルマ米は、同法二条所定の米穀に該当し、前記農林省告示(本件当時の食糧管理法の施行に関する件九(二)、農林大臣の定める販売又は消費の目的をもって政府又は販売業者から買入れた米穀をその者が当該目的に従い又は農林大臣の指示に従い、売り渡す場合)にいわゆる「農林大臣の定める販売又は消費の目的をもって」政府が前記餅組合(神奈川県餅類工業組合)に売り渡したものである。すなわち、本件記録並びに当審において取り調べた証拠によれば、本件ビルマ米は、昭和二八年七月二七日附二八食糧三四五八号食糧庁長官より都道府県知事宛「菓子原料米割当に関する件」と題する通達に基いて、被告人吉沢を代表者とする前示餅組合に売り渡されたものであって、右通達並びにこれに添附された菓子製造原料用米穀の取扱要領によれば、本件ビルマ米は、内地糯玄米(五等)その他右通達所定の米穀と共に、知事の指定する菓子製造業者に菓子製造原料用として売却されたものであることが明らかである。右通達によれば、本件ビルマ米は、特定のものであるから高熱処理する菓子(例、おこし、せんべい、掛物等)に限り割り当てられるべきもので、処理にあたっては水洗、再搗精の上加熱することを周知徹底せしめるよう附記されてはいるが、なお右原料米は、すべて、食糧管理法の対象であるもので、知事は他用途に流用又は転売することのないよう十分監督、指導すべきことが明記されているのである。右ビルマ米がいわゆる黄変米として農林大臣より主食として配給することが不適当と認められたとしても、これをもって直ちに本件ビルマ米が食糧管理法の適用より除外さるべきものと認むべき根拠とはならない。その他本件記録に徴するも本件ビルマ米が食糧管理法所定の米穀に該当しないと認むべき根拠はない」旨判示している。そして、本件記録並びに原審で取り調べた証拠によれば、右の原判示事実認定を首肯することができるから、その認定した事実関係の下における原判示の法律上の判断もこれを正当として是認せざるを得ない。されば、所論は、結局原判示に副わない独自の見解であって、採るを得ない。

弁護人三輪一雄の上告趣意について。

所論は、判例違反をいうが、所論引用の判例は本件事案とは異る価格統制に関するものであるばかりでなく、原判決の認定した事実関係の下における(高熱処理する菓子の原料に供せられうる米穀)判断は、その趣旨むしろ右判例に合致し何等これと相反するものとは認められないから、所論は上告適法の理由として採るを得ない。

よって、刑訴四〇八条により、裁判官の全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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