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最高裁判所第一小法廷 昭和32年(オ)1092号 判決 1960年2月11日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人植木昇の上告理由について。

しかし、無権利者から動産の譲渡を受けた場合において、譲渡人が民法一九二条によりその所有権を取得しうるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもつては足らないものといわなければならない(大正五年五月一六日大審院判決、民録二二輯九六一頁、昭和三二年一二月二七日第二小法廷判決、集一一巻一四号二四八五頁参照)。

されば原判決が、上告人は本件物件を一審原告山谷俊一より買い受けたが、山谷は当時右物件については全くの無権利者であつたこと、当時山谷より物件の引渡を受けはしたが、その引渡はいわゆる占有改定の方法によつたものであることを証拠によつて確定し、しかも一方において右物件は、判示のような経緯から、被上告人友定進(同人は当時右物件の売買につき真実の権利者らからその権限を付与されていた)より被上告人株式会社光洋に売却され、代金の完済とともにその所有権を譲渡し、かつその引渡が了されたというのであるから、原判決がこれらの事実関係から上告人の所論即時取得による所有権の取得を否定し、これを前提とする本訴請求を排斥したのは正当というべきである。

論旨は、結局民法一九二条の解釈適用につき右と反対の立場に立ち、独自の見解を主張し、また原審の適法にした事実認定を非難するに帰するから採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高木常七 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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