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最高裁判所第一小法廷 昭和32年(オ)812号 判決 1960年7月27日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人石井錦樹の上告理由について。

上告組合は、昭和二六年法律第二三九号による改正後の中小企業等協同組合法によつて設立された法人たる信用組合であつて、同中小企業等協同組合法七六条(現行法九条の八)によれば、信用協同組合は法定の除外例に当る者を除いては組合員以外の者の預金の受入をすることができないことになつており、被上告人は右法定の除外例に当る者でないことは、原審の確定するところによつても明らかであるが、組合の役員が、組合の名において、組合のために、本件の如き預金契約を締結した場合、同役員は、組合員以外の者の預金の受入をしたものとして同法所定の罰則の適用を受けることがあるのは格別、原審の確定した事実関係の下において、同法の目的とするところに照し(同法一条参照)本件預金の受入契約自体が、組合本来の事業遂行に不適当なものであるとはいえず、公序良俗に反するものと認められない。したがつて所論のようにこれを法人存立の目的の範囲外の行為であつて民法四三条に違反するものであるとし、または実体法上無効のものであるとすることはできない。

さればこれと同趣旨に出でた原判決は結局正当であるとして是認すべく、論旨は採るを得ない。

よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高木常七 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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