最高裁判所第一小法廷 昭和33年(あ)217号 判決 1958年6月05日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人山崎清の上告趣意第一点は、判例違反をいうが、原判決は、被告人が第一審判決の判示会社の業務に関し、同判示製造場で製造した課税物品に対する物品税を逋脱しようと企て、同判示物品を販売移出したにかかわらず、大須賀一男若しくは飯島福雄に命じて同判示のごとく帳簿に記載させず或は単価又は数量を過少に記載させる等して虚偽の申告書を提出し同判示のごとく物品税を逋脱し又は逋脱を図った旨の認定事実をもって、所論物品税法一八条一項二号に該当するものと判断したものであるから、所論のごとき判例違反は認められない。
同第二点は、判例違反をいうが、所論福岡高等裁判所の判例のあった後昭和二九年九月三〇日なされた当法廷の決定によれば、控訴審が事実の取調をなし、破棄自判するような場合には、検察官の請求により、公訴事実の同一性を害しない限度において、訴因の変更を許すべきものであるから(判例集八巻九号一五六五頁以下参照)、所論は、刑訴四〇五条三号の上告理由に当らない。
同第三点は、違憲をいうが、記録によれば、所論証人の尋問には被告人にその立会の機会を与え且つ現に弁護人が立ち合って尋問をしていることが認められるから所論は、その前提を欠き採るを得ない。
同第四点、第五点は、判例違反をいうが、所論判例は本件に適切でなく、従って、所論は、その前提を欠き採るを得ない。
同第六点は、単なる訴訟違反、事実誤認の主張を出でないものであり、同第七点は、量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また、記録を調べても、同四一一条一号ないし三号を適用すべきものとは認められない。
よって、同四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)