最高裁判所第一小法廷 昭和33年(オ)1036号 判決 1959年4月30日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人弁護士高木定義の上告理由第一点ないし第三点について。
しかし、抵当不動産について、すでに競落許可決定が確定し、競落代金が納入された以上は所論売却条件に所論のような瑕疵があり、また、競落代金が所論のように廉価であり、あるいはまた競落前債権者債務者間に弁済猶予の合意があり、更にまた所論のような仮処分があつたとしても、競落による目的不動産の所有権の移転の効力には(従つてこれに基いてなされた所有権取得登記にも)何らの消長なきものと解するを相当とする。右と同趣旨に出た原判決の判断はすべて正当である。論旨は右に反する独自の見解に立脚して原判決を攻撃するものであつて、採るを得ない。なお、競売を民法の売買と同視し本件競売に対し民法一条九〇条等を適用すべきものであるとの所論は原審において主張判断のない事項に属するが故に、ここに審判の限りではない。
よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 高木常七)