最高裁判所第一小法廷 昭和33年(オ)983号 判決 1959年4月09日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人弁護士姫野高雄の上告理由第一、二点について。
しかし、原判決はその判文によつても認め得るように、挙示の証拠により、被上告人は訴外原田有康が原始的にその所有権を取得した本件建物を昭和二二年六月頃右同人から買受けたものであり、その反面上告人はその主張の如く原始的に本件建物の所有権を取得した事実のないことを認定しているのであつて、右証拠に照合すれば右認定は首肯できる。されば、本件建物について所論の如く上告人名義の保存登記が被上告人名義の保存登記よりも先きになされているからといつて、右二ツの登記の間に民法一七六条一七七条を云々して優先、非優先を論議する余地はないのである(上告人名義の保存登記は所有権のない建物についてなされた無効のものと論結しなければならない。)-昭和四年一〇月一一日大審院第二民事部判決、法律新聞三〇六八号一一頁参照。
所論はひつきよう独自の法律論に立脚するか、ないしは独自の観点から事実を想定するかして原判決に所論の違法あるが如く攻撃するものであつて、採るを得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 高木常七)