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最高裁判所第一小法廷 昭和34年(オ)74号 判決 1960年11月10日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士鈴木義男、同河野太郎の上告理由第一点について。

原判示によれば、昭和一四年以来内縁関係にあつた上告人被上告人両名は、同二六年一二月被上告人が家出するまで同棲を続け、その同棲継続中に判示第二目録記載の建物三棟が上告人によつて建築され、被上告人はその所有にかかるその敷地(いわゆる本件土地)の使用を認めていたというのであるから、このような土地の使用関係が民法上の使用貸借に該当するや否やの法律論は別論として、上告人の本件土地の占有権原は特段の事情のない限り右内縁関係の存続する間だけに限られ、これが解消とともに消滅に帰するものと解するを相当とする。然らば右内縁関係が判示のような事情で昭和二八年二月二四日を以て解消したとの判示の下では上告人の本件土地に対する占有権原はもはや消滅に帰し、爾来存在していないものと解すべきである。所論の点に関する原判決の判断は結局同趣旨に帰し、正当であり、その判断の過程に所論の違法あるを認められない。所論は右に反する独自の見解に由来するものであつて、採るを得ない。

同第二点について。

しかし、記録を精査して認め得られる本件訴訟の経過の下では事実裁判所は所論のような点まで釈明権を行使し且つ立証を促さなければならない義務があるわけのものではない(上告人としては所論留置権の主張の陳述後結審までの約五ケ月間に検証その他の証拠の申出を優になし得べき筈であつたと認められる)。所論は独自の見解というの外なく、採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 高木常七)

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