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最高裁判所第一小法廷 昭和35年(オ)1045号 判決 1961年7月02日

笠岡市笠岡五二三八番地

上告人

中備殖産株式会社

右代表者代表取締役

坂本勇

右訴訟代理人弁護士

明石日吉

笠岡市笠岡

被上告人

笠岡税務署長 平田章

右当事者間の法人所得税額更正決定変更請求事件について広島高等裁判所岡山支部が昭和三五年六月二七日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告申立があつた。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士明石日吉の上告理由第一点ないし第三点について。

原判決は、その挙示の証拠に基づき判示事情の下では所論塩飽、遠藤、坂本の各取締役が所論のように役員兼使用人と認めることはできないとした上、更にその挙示の証拠資料を綜合して、判示のような事情及び理由の下に本件手当は役員賞与であつて報酬でないと認定且つ判断しているのであつて、以上の各認定は右各挙示の証拠に照しそれぞれ是認でき、右判断も相当と認める。從つて、本件手当が徴税上損金と計上すべきでないとして上告人の本訴請求を排斥した原判決の判断は正当であり、その判断の過程に所論違法のかどあるを見出し得ない。所論は種々縷説するが、要するに、原判決の右認定と相容れない事実を主張するか、あるいは自己独自の立場から原判決の右判断と相反する法律論を展開するか、そのいずれかであつて、採るに足りない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に從い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 高木常七)

○昭和三五年(オ)第一〇四五号

上告人 中備殖産株式会社

被上告人 笠岡税務署長

上告代理人明石日吉の上告理由

原審は法令の適用を誤り判決理由に齟齬がある。即ち、

第一点 原審は塩飽、遠藤、坂本各取締役が上告会社使用人の仕事に従事して居た事を認めながら、上告会社が小会社で取締役と従業員とを兼ねていても本件給与は利益金の処分であると謂う、取締役の職務権限は取締役会なる合議体の一構成員として取締役会において会社の業務に関する根本的の意志決定を為し、代表取締役を選任して代表取締役の業務執行が法令、定款、株主総会、取締役会の決定した根本方針に適合するや否やを監督するものである。

代表取締役は右決定に基き外部関係で会社を代表し、会社の業務につき意志決定をなすものである、之れに対する賞与は利益金処分である事は言を俟たない、本件につき之れに対する賞与を利益分として申告されて居る事は後記の通り記録上明らかである。

原審が確定した取締役の職務以外の兼務している場合之に対する臨時の給与を如何に取扱うべきか、取締役がその職務のみを為し之れ以外の仕事を取締役以外の人を以つて為したる時、之れに対する会社の経理を勘案して夏期、年末手当が損金として取扱われることは当然である。本件は同一人が二つを兼務し取締役の賞与以外の給与の場合である、然も所謂同族会社でなく、会社の残余財産は取締役の権利に属するものは極めて少率である場合である、原審が小会社との理由で総損金でないと判断した事は商法及び法人税法の適用を誤つたものである事は明らかである。

第二点 原審は監査役高田武が利益金処分賞与以外の損失金勘定賞与を受けて居るから本件給与は利益金であると判断した昭和三一年七月 日付上告人の準備書面で主張した如く高田武夫は常任監査役と言うのは同人は上告会社の監査役以外の仕事をしていたのである、之れは商法上違反であるため主張できないが、小会社の監査役は事実上は会社の使用人である場合がある会社的事態を無視している取締役福山文三郎、相談役小池定雄は役員賞与金は受けて居るが損失勘定賞与金は受けていない、之れは取締役としての職務はあつたが使用人としての仕事をせぬからである事を無視して居る、監査役高田武夫に対する損失金勘定給与があるからと判示するなら取締役福山文三郎が取締役の職務のみを為し利益金処分給与のみを受け損失金処分の給与を受けない理由を総合判示の上、事実を判断すべきに拘らず之を為さぬのは判決理由に齟齬がある。

第三点 原審は定款で定められた取締役の給与額を超えているから利益金なりと判示するが月額二十五万円と言うのは事業年度の取締役の生活費的損失金勘定の限度を定めたことは定款上明らかである。

仮りに原審が判示の如く一ケ月の限度を超えたからと謂うなれば超えない部分については当然その限度内において損金に計上さるべきものであり本件更正決定はその限度において変更さるべきである。

然るに原審が上告人の請求を全部棄却したのは商法及び法人税法の規定の適用を誤つたものである。

以上何れの点よりするも原判決は破毀さるべきものと信じます。

以上

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