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最高裁判所第一小法廷 昭和35年(オ)677号 判決 1960年9月22日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人真田重二、同萩原博司の上告理由第一点について。

所論は、原判決の、本件選挙の第三投票所における代理投票に際し、一名の代理投票補助者は選挙人の指示する候補者の氏名を記載し、他の補助者がこれに立ち会つていた旨の認定が、投票の秘密を侵し違憲、違法であるというのである。しかし、原判決は、右代理投票には、一名の代理投票補助者が選挙人に代つて投票用紙に候補者の氏名を記載し、これに他の補助者が立ち会つていたことから見て、右記載は選挙人の指示どおりになされたものと推認しうべく、これを履えすに足る事実を確認すべき証拠がない旨を判示したものであつて、右判断は、挙示の証拠関係に照らしこれを是認できる。そしてかかる原審の判断は、何ら所論のように投票の秘密を侵したものとは認められず、違憲の主張は前提を欠き、また所論公職選挙法違反の点も認められない。それ故、所論は採るを得ない。

同第二点、第三点について。

所論の点に関する原審の認定は、挙示の証拠により是認できる。所論は原審の裁量に属する証拠取捨、事実の認定を非難するに帰し、所論のような違法は認められない。

同第四点について。

原審は、本件第三投票所における午前一〇時以降の代理投票は投票管理者に対する適法な申請なくして行われたもので、代理投票事務の管理執行に瑕疵のあつたことに帰する旨を判示すると同時に、右代理投票においては、代理投票補助者一名が選挙人に代つて投票用紙に候補者の氏名を記載し、これに他の補助者が立ち会つていたのであつて、右記載は選挙人の指示する候補者の氏名を記載したものと認められる旨を認定しているのである。そして右認定は、挙示の証拠関係によりこれを是認できる。しからば、右認定の事実関係を是認しうる限り、前記のごとき代理投票事務管理執行に違法があつたとしても、その一事をもつて、直ちに本件選挙の自由公正を害し、選挙の結果に異動を及ぼす虞があるものとはいえない。されば、本件選挙を無効とした上告人の裁決は違法であり、取消を免れないのであつて、原判示は結論において正当である。原判決が本件代理投票申請者の数と、当選者と次点者との得票数の差とを比較した判示は、不必要の説示であり、この点に対する所論は原判決に影響のない主張に帰する。

同第五点について。

所論の点は選挙の規定違反とは認められず、この点に関する原判示は首肯できる。所論は採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)

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