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最高裁判所第一小法廷 昭和36年(あ)1915号 判決 1962年2月22日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人原田香留夫、同高井昭美の上告趣意第一点中第一審判決のなした簡易公判手続は、憲法三七条二項に違反するというが、同条項は、裁判所の喚問した証人につき反対尋問の機会を十分に与えなければならないというのであって、反対尋問の機会を与えない証人その他の者の供述を録取した書類は絶対に証拠としてはならないという意味のものでないことは、当裁判所大法廷の判例(判例集三巻六号七八九頁以下、同四巻一〇号一八八六頁以下参照)とするところ、原一審手続では、証人は喚問されず、また、証拠書類に対し何等異議を申述べた形跡もないのであるから、同条項違反の主張は採ることができない。次に、簡易公判手続は、所論比較的軽微な事件について被告人が有罪である旨陳述したときのみに限り訴訟の合理的運営を図る目的をもって(伝聞の証拠書類に対し証拠とすることに異議を述べたときにはこれを証拠とすることができないとする)合理的な法律上認められた訴訟手続に過ぎないから、当裁判所大法廷判例(判例集七巻六号一三六六頁以下、同二巻五号五一七頁以下)の趣旨により、その余の違憲の主張も採ることができない。

同第二点は、原判決は、第一審判決がその末尾添付の別表記載の9、10、11の事実を被告人の自白のみによって認定した違憲、違法を認容し且つ判例に違反するというが、所論引用の判例は本件に適切でなく、また、原判決の認容した第一審判決は、被告人の右事実の自白のほか、これが真実性を保障しうる被害者の始末書又は被害届の各謄本、故売者寺田亀の供述調書等を証拠として掲げているから、所論は、その前提を欠くものであり、また、同第三点は、量刑不当の主張であって、いずれも、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても刑訴四一一条二号を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)

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