最高裁判所第一小法廷 昭和36年(オ)1174号 判決 1962年4月26日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人山田一元の上告理由第一点について。
原審が、民法第九七条ノ二所定の公示による意思表示に関して示した判断は首肯することができる。所論は、ひつきようこれと異なる独自の見解に基づき原判決を非難するものであつて、採るを得ない。
同第二点について。
論旨は、表意者たる被上告人が相手方たる訴外鷲田の所在を知らざるにつき所論過失があつたから、民法九七条ノ二第三項但書により意思表示到達の効力を生じないというのであるが、右過失の存在についての主張、立証の責任は、右無効を主張する者の側に存すると解すべきところ、原審においては、この点につき上告人は何ら主張、立証をしていないのであつて、右過失の存在を理由として原判決を非難する所論は、採ることを得ない。また、原審が所論記録取寄をしなかつたことを違法とする論旨も、前記過失の主張が原審においてなされていなかつた以上、前提を欠く主張たるに帰し、採るを得ない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 高木常七)