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最高裁判所第一小法廷 昭和36年(オ)218号 判決 1962年2月15日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人梨木作次郎、同寺村恒郎の上告理由第一点、第二点について。

所論は違憲をいうが、所論の連合国最高司令官の声明、書簡等の性質は、原判決のように解すべきものであり、憲法違反の問題を生ずるものでないこと、また、所論エーミス労働課長の談話は、連合国最高司令官の指示についての解釈の表示であつて、そのような解釈の表示も、当時においては、わが国の国家機関および国民に対し、最終的権威を持つていたものと解すべきものであること(昭和二〇年九月二日降伏文書五項および同月三日連合国最高司令官指令二号四項参照)は、当裁判所の判例の趣旨とするところである(昭和二六年(ク)第一一四号、同二七年四月二日大法廷決定、民集六巻四号三八七頁、昭和二九年(ク)第二二三号、同三五年四月一八日大法廷決定、民集一四巻六号九〇五頁)。それ故、所論は採るを得ない。

同第三点について。

本件解雇が、所論のように特殊性を有するものであつたとしても、その法律上の性質は、民事上の法律行為に外ならないものであり、従つて、他に特別の規定がない限り、その効力は行為時法によつて判断すべきものであることは当裁判所の判例とするところである(昭和二九年(ク)第二二三号、同三五年四月一八日大法廷決定、民集一四巻六号九〇五頁)。これと同趣旨に出でた原判決は正当であつて、所論は採るを得ない。

同第四点について。

所論は原判決の理由不備を前提とし、または原審の認定に副わない事実を前提として、原判決の違憲をいうものである。しかし、原判決によれば本件解雇は、上告人らが単に共産党員であるというだけの理由によつてなされたものではなく、上告人らが共産党員であるとともに積極的な党活動を行つていたものであるから「解雇基準」に該当するものであるとしてなされたものであることは判文上明らかである。それ故、原判決には理由不備の違法は認められない。また、上告人らの行為が「解雇基準」に該当するものであるとの原審の認定は、挙示の証拠によりこれを是認しうるところである。しからば、所論違憲の主張はいずれも前提を欠くものであつて、採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 高木常七)

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