最高裁判所第一小法廷 昭和38年(オ)654号 判決 1965年3月04日
上告人
木村まさゑ
右訴訟代理人
中村慶七
被上告人
岡山きよ
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は被告人の負担とする。
理由
上告代理人中村慶七の上告理由一、二について。
記録によれば、被上告人は、昭和三六年八月二八日午後一時の原審口頭弁論期日において、訴外木村重次郎が同訴外人から直接被上告人に本件土地の所有名義を移すことを承諾し、被上告人において右登記につき適当な者を同訴外人(原判決理由中に控訴人とあるのは訴外重次郎の誤記と認められる。)の代理人として選任する等その登記手続の一切を一任した旨の主張の記載のある右同日附準備書面(記録三七二丁)を供述していることが明らかである。そして、右主張に符合する事実が認められる旨の原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の認定判断は、その挙示の証拠関係に照らして首肯するに足りる。論旨は、原判決を正解せず、原審の適法にした証拠の取捨判断、事実認定を非難するに帰し、原判決には所論違法は認められない。従つて、論旨は採用できない。
同三について。
論旨は、原審が占有の訴に対する本権に基づく反訴を適法としてこれを認容したのは、民法二〇二条または民訴法二三九条の解釈を誤つたものであるという。しかし、民法二〇二条二項は、占有の訴において本権に関する理由に基づいて裁判することを禁ずるものであり、従つて、占有の訴に対し防禦方法として本権の主張をなすことは許されないけれども、これに対し本権に基づく反訴を提起することは、右法条の禁ずるところではない。そして、本件反訴請求を本訴たる占有の訴における請求と対比すれば、牽連性がないとはいえない。それゆえ、本件反訴を適法と認めてこれを審理認容した原審に所論の違法はないから、論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(長部謙吾 入江俊郎 松田二郎 岩田誠)