最高裁判所第一小法廷 昭和39年(オ)764号 判決 1965年5月20日
上告人
佐伯エン
右代理人
柴田健太郎
被上告人
佐伯武
ほか二八名
被上告人
三山信子
右被上告人二九名の代理人
古川毅
主文
原判決中、被上告人らの共有持分の及ぶ範囲を確認した部分を破棄し、右部分につき本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
その余の部分に対する上告を棄却する。
前項につき上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人柴田健太郎の上告理由第一点について。
共有持分権の及ぶ範囲は、共有地の全部にわたる(民法二四九条)のであるから、各共有者は、その持分権にもとづき、その土地の一部が自己の所有に属すると主張する第三者に対し、単独で、係争地が自己の共有持分権に属することの認確を訴求することができるのは当然である(昭和三年一二月一七日大審院判決、民集七巻一〇九五頁参照)。これと同趣旨にでた原判決の判断は正当であり、論旨は独自の見解であつて、採用できない。
同第二点について。
本件において所有権の帰属につき争があるのは、被上告人らの主張する共有地の全部ではなく、その一部であること原判文上明らかであるのに、原判決は、共有地の全部が被上告人らの共有持分の及ぶ範囲であることを確認していること論旨指摘のとおりである。一筆の土地であつても、所有権確認の利益があるのは、相手方の争つている地域のみであつて、争のない地域については確認の利益がないこというまでもない。すなわち、原判決は、確認の利益のない部分について確認の判決をした違法があるといわざるをえない。論旨は理由があり、原判決中確認の訴を認容した部分を破棄し、争のある土地の範囲を特定させるため、原審に差し戻すべきものとする。
同第三点について。
甲乙両山林の境界についての原判決の事実認定は、挙示する証拠関係に照らして首肯しえなくはない。論旨は、原審の裁量に属する証拠の取捨判断、事実認定を非難するに帰し、採用することができない。
よつて、その余の部分に対する上告を棄却し、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(松田二郎 入江俊郎 長部謹吾 岩田誠)