最高裁判所第一小法廷 昭和40年(オ)1317号 判決 1967年5月25日
上告人
植村臻助
上告人
植村貞子
右両名訴訟代理人
島秀一
伏見礼次郎
被上告人
植村キヨ
右訴訟代理人
高天弘房
吉村泰蔵
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人島秀一の上告理由第一点および(二)について。
原審の事実認定はその挙示の証拠関係に照らして肯認できないものではなく、その過程において何ら所論の違法はない。原審は、上告人らと被上告人との間に養親子としての実体が全く失われ、将来においてもその回復が不能の状態のなつた主要な原因は、上告人ら両名にあるとして、被上告人の上告人らとの「縁組を継続し難い重大な事由がある」ことを理由とする本訴請求を容認したものであつて、原審の右判断は、原審の適法に認定した前記事実関係に徴し首肯できないものではなく、所論引用の判例と何ら抵触するものではない。所論は原判決を正解しないか、または原判決の認定にそわない事実に基づいて原判決を非難するもので採用できない。
同第三点について。
憲法二〇条が同一九条と相まつた保障する信教の自由は、何人も自己の欲するところに従い、特定の宗教を信じまたは信じない自由を有し、この自由は国家その他の権力によつて不当に侵されないということで、本件のように特定の場所で布教または祭祀を行なわないことを私人間で約束することを禁ずるものではないと解すべきことは、当裁判所昭和二七年(オ)第四二二号同三〇年六月八日言渡大法廷判決(民集九巻七号八八八頁)の趣旨に徴し明らかである。原判決には所論憲法違反はなく、論旨は理由がない。
上告代理人伏見礼次郎の上告理由第一点および第三点について。
原審が、単に所論破綻主義の立場に立つて被上告人の上告人らに対する本訴請求を容認したものではないこと、原審が認定した事実関係のもとにおいては、被上告人の上告人らに対する請求は、「縁組を継続し難い重大な理由があるとき」にあたるとした判断には、何ら所論の違法はなく、所論引用の判例とも抵触しないことは上告代理人島秀一の上告理由第一点および(二)について判示したとおりであり所論は採用できない。
同第二点について。
原審が、被上告人と上告人ら両名との間の縁組は、主として上告人ら両名に存する原因によりこれを継続し難い状態となつた旨認定判断していることは、原判決の判文上明らかであるから、原判決には何ら所論の違法はなく、所論は採るを得ない。
同第四点について。
所論違憲の主張のないことは、上告代理人島秀一の上告理由第三点について判示したとおりである。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(岩田誠 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 大隅健一郎)