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最高裁判所第一小法廷 昭和41年(オ)1270号 判決 1967年6月29日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人由井健之助の上告理由第一点について。

原判決(引用の第一審判決を含む。以下同じ。)は、本件債権譲渡が相当な対価をもつてなされたものではないのみならず、むしろ、訴外花咲において子供の養育費や他の借財の支払に必要とするとの理由のもとに、右譲渡債権については、上告人から右訴外人に一〇〇万円を交付し、右同額は右訴外人の上告人に対して負担する原判示債務の一部に充当しない約であつた趣旨の認定判断をしているのであり、したがつて、本件債権譲渡を債務の本旨に従つてなされた弁済と同視しえないことはいうをまたないところである。そして、原判決によれば、訴外花咲は、上告人および被上告人らその他の債権者に対して多額の債務を負担しながら、資産としては本件債権のほかに見るべきものがなく、右債権が総債権者のための唯一の共同担保になつていたところ、右訴外人は他の債権者を害することを知りながら右債権を上告人に譲渡したものであり、しかも、上告人において本件債権譲渡が債権者を害することを知らなかつたことを認めえないというのである。しからば、本件債権譲渡は詐害行為として取消を免れないものというべく、これと同趣旨に出た原判決は相当であり、なんら所論の違法を認めえない。所論引用の昭和二六年(オ)第七四四号同二九年四月二日最高裁判所第二小法廷判決、および昭和三三年九月二六日最高裁判所第二小法廷判決は、いずれも本件とその場合を異にして、本件に適切ではない。それゆえ、論旨は採るをえない。

同第二点について。

原判決挙示の証拠関係に照らせば、上告人が訴外花咲から本件債権譲渡を受けるについて債権者を詐害する意思がなかつたものとは認められない旨の原審の判断は、是認するに足り、これに経験則に反する点は認められない。所論は採るをえない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田 誠 裁判官 大隅健一郎)

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