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最高裁判所第一小法廷 昭和42年(あ)2109号 判決 1968年4月18日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人渡辺隆の上告趣意のうち、憲法三七条三項違反をいう点は、同条項前段所定の弁護人を依頼する権利は、被告人がみずから行使すべきもので、裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければよいものである(昭和二四年一一月三〇日大法廷判決・刑集三巻一一号一八五七頁)ところ、記録によると、被告人は、本件について公訴を提起される以前の昭和四一年三月二七日に、みずから弁護士中村嘉七を弁護人に選任し、第一審公判の終結するまで同弁護人の弁護を受け、その間なんら異議不服を述べた形跡もないのであるから、所論は採ることができない。

同判例違反をいう点は、引用の判例は、同一の弁護士を国選弁護人に選任した事案についてのもので、事案を異にする本件には適切でなく、上告適法の理由に当たらない。

その余の論旨は、憲法三一条違反をいう点もあるが、実質は単なる法令違反の主張であって、上告適法の理由に当たらない。(なお、刑訴規則二九条二項は、国選弁護人についての規定であって、私選弁護人について規定するものではなく、利害の相反する被告人らが選任した同一の弁護人の出頭のもとで、審判がなされたとしても、訴訟法上、これを違法とすべき理由はない。)

よって、刑訴法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 大隅健一郎)

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