最高裁判所第一小法廷 昭和43年(オ)1184号 判決 1969年5月29日
上告人
小西末一
代理人
長嶋隆成
被上告人
西海光子
ほか一名
被上告人
西海正典
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人長嶋隆成の上告理由について。
原審の確定した事実によれば、被上告人らの母西海百合江は、昭和二一年訴外伊藤重雄と結婚したが、同二四年四月頃伊藤と事実上の離婚をして別居し、爾来同人とは全く交渉を絶ち、同二六年一〇月二日正式に離婚したのであるが、それに先だつ同二五年九月頃から同三九年三月頃までの間上告人と肉体的関係を持続し、その間同二七年三月二八日被上告人西海光子を、同三一年一月三一日被上告人西海正典を各分娩し、同人らを自己の嫡出でない子として出生届をしたというのである。
右事実関係のもとにおいては、被上告人光子は母百合江と伊藤重雄との婚姻解消の日から三〇〇日以内に出生した子であるけれども、百合江と重雄間の夫婦関係は、右離婚の届出に先だち約二年半以前から事実上の離婚をして爾来夫婦の実態は失われ、たんに離婚の届出がおくれていたにとどまるというのであるから、被上告人光子は実質的には民法七七二条の推定を受けない嫡出子というべく、同被上告人は重雄からの嫡出否認を待つまでもなく、上告人に対して認知の請求ができる旨の原審の判断は正当として是認できる。右原審の判断の過程に、所論違法は認められない。論旨は、右と異なる独自の見解であつて採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(長部謹吾 入江俊郎 松田二郎 岩田誠 大隅健一郎)