最高裁判所第一小法廷 昭和44年(オ)332号 判決 1969年7月24日
上告人
佐々木綾子
代理人
中村慶七
被上告人
今渕せつ
代理人
神谷春雄
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人中村慶七の上告理由第一点について。
所論引用の旧特別都市計画法一四条、土地区画整理法九九条の規定は、所論のように、従前の土地の所有者が、従前の土地の賃借権に基づいて仮換地(換地予定地)の使用収益をなしうる旨主張する者を、被告として、被告が従前前の土地について右賃借権を有しないことの確認を求める訴を提起することを許さない趣旨のものではないし、また、原判決主文第三項の表示は、上告人において収去すべき建物と明け渡すべき土地を特定するためのものにすぎず、かかる特定は仮換地の所在に関する表示によつてしなければならないものではないから、原判決に所論の違法はない。論旨は、原判決を正解せず、独自の見解に立つてその違法をいうにすぎないもので、採用するに足りない。
同第二点について。
従前の土地について賃借権を有するにすぎない者は、施行者から仮換地について使用収益部分の指定を受けることにより、はじめて当該部分につき現実に使用収益をなしうるに至るのであつて、その指定を受けない段階においては、仮換地につき現実に使用収益をなしえないものというべきであり(昭和三四年(オ)第八四二号同四〇年三月一〇日大法廷判決、民集一九巻二号三九七頁)、このことは、原判決が確定するように、上告人が特別都市計画法施行令四五条の規定によりその有する賃借権につき権利指定の届出をしたが、区画整理事業の施行者である青森県知事から上告人の使用収益しうべき土地の指定がなされていないという事情がある場合においても、異なるところはないと解すべきである(昭和四二年(オ)第三二六号同四三年三月一日第二小法廷判決、民集二二巻三号四七三頁参照)。それゆえ、これと同旨に出て、原判決別紙物件目録記載の建物のうち本件係争地上に存する部分を収去し、その敷地である本件係争地の明渡を求める被上告人の請求を認容すべきものとした原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(大隅健一郎 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠)