最高裁判所第一小法廷 昭和44年(オ)363号 判決 1970年2月26日
上告人
岸本富美代
代理人
豊川忠進
被上告人
岡本政勝
外一名
代理人
原田永信
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人豊川忠進の上告理由第一、第二について。
不動産仲介契約の当事者は、報酬金の支払に関し、その対象である業務の範囲、支払方法、支払時期等につき、別段の合意をすることができる。本件においては、第一審原告らと被告との間において、訴外名大商事株式会社が違約金を支払つて売買契約を解除したために本件媒介契約における媒介対象である売買契約が未履行のまま終了した場合において、売主(第一審被告)が媒介業者(第一審原告らほか一名)に支払うべき報酬額が予定され、その支払期限が売買契約解除の時と定められたものであり、仲立営業者が、仲立契約中に定めたこのような契約終了の場合の報酬額の約定はもとより有効であり、第一審被告が違約金を取得した場合の最高報酬金額についても、宅地建物取引業法一七条一項、二項、昭和四〇年四月一日建設省告示第一、一七四号の適用があると解すべきである。そして、一個の売買に関し、媒介者が数人あり、かつ各媒介者が当該取引に関して数人の媒介者が関与することを予め承諾したときは、その数人が一体となつて前記最高報酬額以下の報酬を受領することができる趣旨というべく、数人が各別に右最高額に達するまでの額の報酬を受け取ることができる趣旨ではない。本件においては、第一審原告両名および武知徳市の三名は、合計金八〇九、八〇〇円の報酬金を受けることができるにすぎないから、別段の主張立証のない本件においては、右三名の報酬請求権は平等で、結局各自第一審被告に対し、金二六九、九三三円を請求できるものといわなければならない。右と同旨の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯できる。原判決には所論の違法はなく、論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠 大隅健一郎)