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最高裁判所第一小法廷 昭和44年(オ)685号 判決 1969年12月18日

上告人

片山昭男

被上告人

大野運送有限会社

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について。

原判決およびその訂正引用した第一審判決の事実認定は挙示の証拠により是認しうるところであり、右事実関係の下において、訴外堀隆生には本件事故発生につき過失はなかつたとした原判示は正当である。原判決には所論の違法は認められず、論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠 大隅健一郎)

〔第二審判決理由(抄)〕

一 <省略>

二 次に、本件事故発生につき、堀隆生に過失があつたかどうかの点について判断する。前示の如き状況のもとで発生した本件事故で、先ず問題となるのは、堀隆生において、被控訴人車と離合運転する際、被控訴人が離合の直前になつて道路中央線を五〇糎も越えて対向車のあることが明瞭な反対側通路に突如として立入つてくることがありうるということまで予見し、いつでもかかる事態に対処できるよう被控訴人の動静に注意し、減速運動をなす義務があるかどうかという点にある。然るところ、自動車交通の高度に普及発達した現在、本件のように中央線のひかれている見通しのよくきく舗装道路上を運行する堀としては、対向する原動機付自転車(被控訴人車)があり、その対向車の前方に自動三輪車が停車している場合でも、停止自動車の位置、道路の幅員、原動機付自転車の型態等からみて、被控訴人車が右三輪車の右側を中央線を越えることなく、十分に通行できる状況にあるときは、被控訴人車は道路交通法の定めるところに従い、中央線の進行左側を安全に離合運転するものであることを信頼して運行を継続すれば足り、同車が離合直前、法に違反し、突如として中央線を越えて自己の進路にまで立入ることや、況んや飲酒運転の結果、かかる無謀行為にでることまで予見して(被控訴人がかかる所為にでたのは、多分に飲酒運転の結果であると推認される。)常にこれに対処できる方法をとりながら進行しなければならないものではないと解するのが相当である。次に、<証拠>によれば、前示状況のもとにおいて、被控訴人が堀の進路に立入つた際、堀はこれを認めるや直ちにハンドルを左に切つて被控訴人車との接触を避けようと試みたのであるが、両者の間隔はすでに二〇米以内にあり、堀の貨物自動車は時速四五粁、被控訴人の自動車も相当速度で進行していた関係上間に合わず、前示事故の発生をみるに至つたことが認められ、とくにこの際、堀のハンドル操作に責めらるべき遅滞があつたと認めることはできない。

そうすると、本件事故の発生につき堀に過失はなかつたものと認められ、従つてまた本件貨物自動車の保有者である控訴人も、同車の運行について注意を怠らなかつたものといわなければならない。なお、前示乙号各証によつて認められる本件事故後の控訴人車の停止状況からすれば、同車の構造上の欠陥又は機能障害もなかつたものと認められる。<以下略>

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