最高裁判所第一小法廷 昭和45年(オ)637号 判決 1970年10月22日
上告人
黒川隆
代理人
平井博也
山田滋
柴田徹男
被上告人
三井不動産こと
荒井五郎
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人平井博也、同山田滋、同柴田徹男の上告理由について。
上告人と飯田邦生らとの間において成立した本件(一)ないし(三)の土地売買契約は、成立時期において、被上告人の仲介斡旋活動と時期を接しているのみならず、その売買価額においても、被上告人の仲介活動によりあと僅かの差を残すのみで間もなく合意に達すべき状態であつたところ、被上告人が上告人と下相談した価額を上廻る価額で成立しているのであるから、上告人および飯田邦生ら契約当事者双方は、被上告人の仲介によつて間もなく契約の成立に至るべきことを熟知しながら、被上告人の仲介による契約の成立を避けるため被上告人を排除して直接当事者間で契約を成立させたものであつて、上告人および飯田邦生には被上告人の仲介による土地売買契約の成立を妨げる故意があつたものというべきであり、さらにまた、上告人と飯田元次との間に成立した本件(三)の土地上の建物の明渡契約も、成立時期において被上告人のした仲介斡旋活動と接近しており、かつ、被上告人の仲介活動によつて飯田元次の承諾した明渡契約の内容と全く同一の内容からなりたつているのであるから、これまた上告人は被上告人の仲介による右建物明渡契約の成立を故意に妨げたものというべきである旨の原審の認定判断ならびに上告人は被上告人に対し本件(一)ないし(四)の土地を更地として取得することの仲介依頼をするにあたり、その取得契約の成立を停止条件として取引価額の三パーセントにあたる報酬を支払うことを約したものであり、上告人は右のとおり契約成立という停止条件の成就を妨げたものであるから、被上告人は停止条件が成就したものと看做して報酬を請求することができる旨の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯できる。所論は、原審が適法にした事実認定を非難するか、原審の認定した事実と異なる事実に基づいて独自の見解を述べて原判決を非難するものであるが、原判決には所論の違法はなく、論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(長部謹吾 入江俊郎 岩田誠 大隅健一郎 藤林益三)