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最高裁判所第一小法廷 昭和45年(オ)835号 判決 1972年10月26日

主文

理由

上告代理人吉田秋広の上告理由について。

訴外沢正久は、被上告人から新たに営業資金を借り受けるに際し、被上告人の経営する田中酒造株式会社から引き続き商品の供給を受けて営業を継続することを目的として、被上告人に対する全債務を担保するため、被上告人との間に本件各不動産につき売買予約を締結し、借受金の一部をもつて第三者に対する抵当債務を弁済して抵当権設定登記の抹消を受けたのち、右売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由したこと、沢正久は、その後約四年間営業を継続したのち、被上告人との間で、右担保の目的である本件不動産の所有権を債務全額の弁済に代え被上告人に譲渡する旨の合意をし、売買名義による右仮登記に基づく所有権移転登記を経由したことなど原審の確定した事実関係のもとにおいては、右売買予約および代物弁済契約はいずれも債権者を害する行為にあたらないとした原審の判断は、正当として是認することができる。なお、沢正久が右各行為をするにつき債権者を害することを知つていたものと認められないとした原審の認定判断も、原判決(その引用する第一審判決を含む。)挙示の証拠に照らして、肯認することができないものではない。原審の認定判断に所論の違法は認められず、論旨は採用することができない。

(裁判長裁判官 岩田 誠 裁判官 大隅健一郎 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一)

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