最高裁判所第一小法廷 昭和45年(オ)890号 判決 1971年2月25日
上告人
岸栄吉
代理人
大塚重親
大塚守穂
被上告人
工藤生五郎
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人大塚守穂、同大塚重親の上告理由について。
競売開始決定が所有者に対して送達されていなかつたとしても、いつたん競落許可決定が確定すれば、競売の基本たる債権の不存在または抵当権の無効である場合を除き、右競売を無効とすべきではなく、競落人は有効に競落不動産の所有権を取得するものと解すべきであり、その後においては、競売手続の瑕疵を理由として、競落許可決定の無効を主張することが許されない旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。また、憲法三二条違反の主張は、その実質は原判決に単に競売法ないし民訴法違反があることを主張するにすぎず、その違反の採用できないことは前記のとおりである。論旨はいずれも採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(岩田誠 長部謹吾 大隅健一郎 藤林益三)