最高裁判所第一小法廷 昭和47年(オ)229号 判決 1976年1月29日
主文
理由
上告代理人菊地政、同増沢照久の上告理由第一点について
原審が確定した事実関係によると、上告人主張の賃借権は本件建物に対する競売申立登記がされた後に成立したというのであるから、訴外東邦工業株式会社は、右賃借権をもつて、被上告人ら右建物の競落人に対抗することができないものと解するのが、相当である。したがつて、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。それゆえ、論旨は採用することができない。
同第二点について
所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができ、右事実関係のもとにおいては、上告人が商法二六六条の三第一項前段の規定に基づき訴外東邦工業株式会社の本件建物不法占有により被上告人の被つた損害を賠償する義務があるとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
同第三点について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。それゆえ、論旨は採用することができない。
(裁判長裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一 裁判官 岸上康夫 裁判官 団藤重光)