最高裁判所第一小法廷 昭和48年(オ)927号 判決 1974年3月28日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人陶山圭之輔、同宮代洋一、同陶山和嘉子、同高荒敏明、同山本博の上告状記載の上告理由について。
所論の点については、原審が昭和四八年六月二七日付更正決定によつて、その更正をしていることが明らかである。論旨は、前提を欠くものであつて採用することができない。
上告代理人陶山圭之輔、同佐伯剛、同陶山和嘉子、同宮代洋一、同高荒敏明の上告理由書記載の上告理由第一ないし第四について。
労働者災害補償保険法(昭和二二年法律第五〇号)に基づく労災保険制度は、労働基準法(昭和二二年法律第四九号)による災害補償制度から直接に派生したものではなく、両者は、労働者の業務上の災害に対する使用者の補償責任の法理を共通の基盤とし、並行して機能する独立の制度であることに照らせば、労働者の遺族が、労働基準法七九条に定める災害補償と同一の事由について労働者災害補償保険法一二条一項四号、一六条所定の遺族補償一時金の支給を受けるべき場合においては、昭和四五年法律第八八号による改正前の同法に定める遺族補償一時金のように、たとえその支給額が労働基準法七九条所定の補償額に達しないときであつても、使用者は、同法八四条一項により、七九条に基づく災害補償義務の全部を免れると解するのが相当である。これと同旨の原審の判断は正当として是認することができ、その過程に所論の違法はなく、所論中、右違法を前提とする違憲の主張はその前提を欠く。論旨は、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤林益三 裁判官 大隅健一郎 裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一 裁判官 岸上康夫)