最高裁判所第一小法廷 昭和52年(行ツ)105号 判決 1977年12月15日
高知県中村市大橋通五丁目二四一一番地
上告人
有限会社 四万十骨材
右代表者清算人
植村純一郎
豊永富吉
高知県中村市新町四丁目四番地
被上告人
中村税務署長
松浦勝
右指定代理人
滝澤三郎
右当事者間の高松高等裁判所昭和四九年(行コ)第四号法人税額更正処分取消請求事件について、同裁判所が昭和五二年七月二七日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人会社代表者清算人植村純一郎、同豊永富吉の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論違憲の主張は、原判決に右の違法があることを前提とするものであつて、前提を欠く。論旨は、すべて採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 本山亨 裁判官 岸上康夫 裁判官 団藤重光 裁判官 藤崎萬里)
(昭和五二年(行ツ)第一〇五号 上告人 有限会社四万十骨材)
上告人会社代表者清算人植村純一郎、同豊永富吉の上告理由
原判決は、判決に影響を及ぼすこと明らかな判断の遺脱、憲法、法律、命令、通達違反があり破棄されるべきである。
一、 原判決は、控訴人が「控訴人は、砂利採取業者訴外島田昇の倒産を救済する目的で設立された同族会社であり、設立に当つて設立者の一人であり且つ設立後同会社の代表取締役となつた同訴外人から機械装置を買受けた形式をとつたが、現実にはその代金を支払つたわけではなく、実質的には機械装置類を現物出資として受入れたものであつてこれを四八〇万円と評価したことは、なお充分使用に耐えるものであつたことからして、決して不当なものとはいえない」旨を主張したのに対し、「現物出資の場合は現物出資をなす者の氏名、出資の目的たる財産、その価額及びこれに対して与える出資口数を定款に記載しなければその効力を有しない」として控訴人の主張を採用しなかつた。
しかしながら、かような場合の税務取扱いにおける通達の趣旨は、別紙法人税の理論と実務(市丸吉左エ門著、税務経理協会出版、八七四頁)に記載されたように「同族会社を設立するときに株主、社員が所有する土地、建物、機械器具等の資産を時価以上に高く評価して現物出資をし、または形式的に現金払込みをして直ちに株主または社員からその資産を高価に買入れた」場合の取扱いはその時価超過部分の価額は資本の払込みがなかつたものとして資本金額を計算することになっているのである。
二、 本件は実質的には現物出資であるが、形式的には現金払込みをして直ちに機械設備を買入れたことにしたものであり、租税法における実質課税の原則からするも本件は現物出資に当り、仮りに原審が認定したように現物出資とみなされないとしても後者の形式的買入れに当るものである。
しかるに原判決は後者についての判断をしていない。
三、 税務官吏は公務員であり、法律、命令、通達を遵守すべき義務があるのに本件課税処分はこれに従わず、全く恣意による課税処分であつて憲法三〇条の租税法律主義に違反し憲法九九条及び国家公務員法九八条の公務員の遵守義務に違反した通達無視の違法処分である。 以上
(添付書類省略)