最高裁判所第一小法廷 昭和54年(行ツ)15号 判決 1979年9月27日
高松市宮脇町一丁目一〇番一号
上告人
向井裕
東京都千代田区霞が関三丁目一番一号
被上告人
国税不服審判所長 岡田辰雄
高松市楠上町二丁目一番四一号
中央合同庁舎第四号館
被上告人
高松税務署長 菅原淳
右当事者間の高松高等裁判所昭和五三年(行コ)第六号裁決取消等請求事件について、同裁判所が昭和五三年一一月一四日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由一及び二について
所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、採用することができない。
同三及び六について
原判決の判示及び記録に現れた本件訴訟の経過によれば、第一審の手続に所論の違法は認められない。右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、採用することができない。
同四及び五について
民訴法二三八条の定める期日指定申立期間は立法上合理的範囲を逸脱していないとした原審の判断は、正当として是認することができる。所論違憲の主張は、ひつきょう、右申立期間の定めに関する立法政策の適不適を争うものにすぎず、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤崎萬里 裁判官 本山享 裁判官 中村治朗)
(昭和五四(年行)ツ第一五号 上告人 向井裕)
上告人の上告理由
一、裁判官忌避裁判確定前に言渡された原判決手続の瑕疵は最高裁昭和二九年一〇月二六日付判決を援用しても治癒されない。原審裁判官らに対し憲法一四条(禁差別)違反にもとずき裁判官訴追請求を上告人はなし、さらに裁判官告訴(二回)中という背景下において忌避裁判がなされていたことを原審裁判官らは熟知していたにもかかわらず忌避裁判即時抗告中に判決を言渡したことは故意であり感情的悪意のあるところ到底治癒はあり得ない。そもそも刑事事件は刑訴法一条の迅速が一つの要件に数えられるが、本件は民訴法が適用され公正が正義の要件となるにもかかわらずいたずらに判決を強行したるは裁判官として憲法七六条三項(良心)違反であり、裁判官としての資質に欠け憲法一五条、九六条に違反し国民の基本的人権を奪ったことは憲法一条及び三二条違反で天人ともに許すことはできない。
二、小川正明裁判官が右の背景から裁判官を退任し検事に転補されたのは村上裁判長らの独断と良心の欠如と裁判官訴追委員会事務官のいう無能に見切りをつけたもので、右小川裁判官が合議に加って原判決の内容を確定した事跡を客観的に証明できないところ裁判所法二六条違反であり憲法七六条三項違反である。
三、訴えの取下げ擬制の効果は右の背景、悪意と故意をはらんだ原審裁判官らの態度があるところ確定的に生じいったん終了した訴訟係属も復活する。また、いわゆる復活できない訴訟を事実上復活し口頭弁論を再開し擬制的取下げの件以外の第四回準備書面の答弁を求める旨の上告人の主張を裁判長自ら朗読陳述したことは訴えの取下げ擬制の効果を自ら放棄し復活を自認したものである。ここにおいて復活を否定するとすればいたずらに国民に対し疑惑と不信の念を与えた訴訟指揮が憲法一条、一五条、九六条違反となり良心の一かけらもうかがえず憲法七六条三項違反でありひいては三二条違反となる。
四、民訴法二三八条は憲法違反である。
旧民訴法における期日指定の申立期間一年を民訴法で三か月に改訂したのは第二審判決にいう合理的範囲ではない。一年を一〇か月にし六か月とするならばまだ合理的範囲ではある。一年の1/4の三か月に急激に短縮したのは合理的を逸脱したものと数学的にも解せるもので到底合理的ではなく憲法一条、一五条違反である。またこの改悪を合理的というなら憲法の命ずるところ何らかのサービスを付加しなければならず、その付加サービスのない非合理的な極端な期間短縮は憲法一条、一五条違反となる。おもんみるに法律は法律専門家のみのためにあるのではない。上告人はインテリを自認するものではあるが、その上告人でさえ民訴法二三八条の適用のあり得ることについては知らなかった。知らない善意の上告人に対して裁判所や公務員たる被上告人らが三球、照代の万才よろしく「だまっていような」式な「知らしむべからず依らしむべし」という前近代的感覚を持つ限りその感覚自体が違憲である。したがって付加サービス即ち通知義務のない民訴法二三八条は違憲である。なぜなら裁判を受ける権利の主体は何人もであり憲法三二条にいう非法律家をも予定している。
五、上告人のいうみなし期日指定の申立は合理的である。
民訴法二三八条それ自体が憲法違反であり、また訴の取下げ擬制の効果もなく、さらに原審裁判官らの悪意故意の態度があるところ、上告人の何らかの意思表示は当然期日指定の申立とみなされる。これを前項にてらして合理的という。これこそ公平な法解釈という。
国民は何らかの意思表示に対して何らかのサービスを受ける権利があり、裁判所にその義務がないと断言するとなればこれは明らかに憲法一条、一五条、七六条三項、九六条違反であり三二条違反となる。
六、第二審が一回のみの口頭弁論で結審し上告人が求める答弁書などの提出を拒否した訴訟指揮は主権者たる国民の意思を軽んずるもので、とくに原審の第四回準備書面の答弁を求める猶予を与えなかったのは憲法一条、一五条、三二条、七六条三項、九六条違反である。
また第二審判決を見る場合、個々の事象を分断して判示し総合的に見ようとする態度がなく、とくに原審裁判官らの悪意・故意を看過したるは極めて恣意的判断、独断予見があったものと見られるところ、第二審判決全体が憲法七六条三項、一五条、一条違反である。
以上