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最高裁判所第一小法廷 昭和55年(行ツ)148号 判決 1981年7月09日

名古屋市千種区堀割町二丁目二一番地

上告人

丸十産業株式会社

右代表者清算人

神谷治一

右訴訟代理人弁護士

天野雅光

名古屋市千種区振甫町三丁目三二番地三

旧昭和税務署長事務承継者

被上告人

千種税務署長

村田亮

右当事者間の名古屋高等裁判所昭和五三年(行コ)第三六号法人税課税処分取消請求事件について、同裁判所が昭和五五年九月二九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人天野雅光の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひっきょう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、いずれも採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 谷口正孝 裁判官 団藤重光 裁判官 藤崎萬里 裁判官 本山亨 裁判官 中村治朗)

(昭和五五年(行ツ)第一四八号 上告人 丸十産業株式会社)

上告代理人天野雅光の上告理由

一 原判決には法令違背、採証法則違背、理由不備の違背がある。

(一) 原判決は「当裁判所は当審における証拠調の結果を参酌しても、控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと判断する」と極めて簡単な説示をするのみで、納得できる具体的な理由が説明されていない。これは、判決には理由を示さなければならないとする民事訴訟法第一九一条に違反しているものである。

(二) 上告人は、中部観光(株)に対し手形割引の方法により貸付をした事実は全くない。

この点について、当時の中部観光株式会社常務取締役奥山宗雄は、昭和五三年二月六日の証拠調期日において中部観光が丸十産業から金を借りたことはない旨証言し(同証人調書四丁)、また同人作成の甲第五号証(昭和三九年五月四日付念書)の記載内容並びに証人成瀬洋三の証言から上告人主張の右事実は明らかに認定できるにもかかわらず、これら重要な証拠を排斥し、右事実を認定しなかった原判決は採証法則の違背並びに理由不備の違背があるものといわなければならない。

(三) 上告人は、架空借入金を計上しているのではなく、現実に実在人から借入れしているものである。

世間でいわゆる金持ちといわれ遊休資金を有する者が貸付けをする場合、税務対策上その出所の追及を避けるため、架空名義を用いて貸付けをなし、借主側も貸主に言われるとおり架空名義で処理することは世間によくあることである。従って、借入先が架空であるからといって、現実に借入れがなされなかったことではないのであって、このことは経験法則上明らかなところである。

上告人主張の右事実は、甲第二、四号証(佐藤佐一郎関係)甲第三号証(足立由光関係)、甲第六号証(白木茂好関係)並びに証人成瀬洋三の尋問の結果により明らかに首肯し得るところである。

しかるに、原判決が右事実を認めなかったことは、経験法則に違反した法令違背があるものといわなければならない。

二 よって、いずれの点からも原判決は違法であるから、原判決を破棄し、さらに相当の裁判を求めるため本申立に及んだ次第である。

以上

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