最高裁判所第一小法廷 昭和61年(行ツ)109号 判決 1987年4月16日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人苑田美穀、同古川卓次の上告理由第一について
労働委員会規則四二条二項は、「公益委員会議は、合議にさきだつて、審問に参与した使用者委員及び労働者委員の出席を求め、その意見を聞かなければならない。ただし、出席がないときは、この限りでない。」と規定しているのであるから、公益委員会議が合議に先立ち審問に参与した使用者委員及び労働者委員(以下「労使委員」という。)から意見を聞く方法としては、公益委員会議に出席を求め、その席上で意見を聴取しなければならないものと解すべきであり、それ以外の方法によるものは右規則の要求する意見聴取とは認め難いものといわなければならない。しかしながら、右規則の規定に違反し、公益委員会議が労使委員の意見聴取をしなかつたとしても、その瑕疵が救済命令を違法ならしめるものと解することはできない。けだし、労働組合法は、不当労働行為救済申立事件に関する処分には労働委員会の公益委員のみが参与するものとし、決定に先立つて行われる審問についてのみ労使委員が参与することを妨げないものとしているにすぎないからである(同法二四条)。これと異なり、原判決が、本件においては合議に先立つ使用者委員の意見の聴取を公益委員会議の席上における聴取以外の公益委員が相当と判断する方法で行つているとの理由により本件救済命令に違法はないとした点は、前記規則の規定の解釈を誤つたものというべきであるが、その結論は正当であるから、原判決に所論の違法はない。また、所論のごとく使用者委員が被上告人における本件不当労働行為救済申立事件の全審問期日に欠席したとしても、それをもつて本件救済命令を違法ならしめるものと解することができないとした原審の判断も是認できないものでもない。論旨は、採用することができない。
同第二について
本件救済命令における命令書の訂正を適法かつ有効なものとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及び説示に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、独自の見解に立つて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 角田禮次郎 裁判官 高島益郎 裁判官 大内恒夫 裁判官 佐藤哲郎)