最高裁判所第一小法廷 昭和22(れ)206 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
被告人A弁護人志波清太郎上告趣意第一点は「第二審の判決は事実理由第一に於
て被告人は昭和廿二年四月十日から同年同月二十二日迄の間前後四回に亘つてB方
で同人に対し衣類を買受けたり洗張をしてやる意思が無く其他買受資金に充てる意
思が無いのに申向けて衣類買受代金及び貸借名義の下に合計金四万二千五百八十円
並に洗張委託名義の下に錦紗袷一枚を交付させて之れを騙取したと判示されたが右
の如く回数毎にその所為を明示せず第一回より第四回迄の日時及詐取せる物件別を
明記ぜざるは結局何時如何なる犯罪が行はれたるや不明にして犯罪事実につき理由
不備の違法あるものとする故に右判決は違法なりと云はねばならぬ」というにある。
同第二点は、「第二審の判決は事実理由第二に於て「被告人は同年五月廿五日か
ら同年同月三十日迄の間に於てC方で同人に虚偽の申出を為して更紗ふとん外十点
を交付させて之れを騙取した」と判示するも右の如く回数毎にその所為を明示せず
第一、二回に渉りて日時及詐取せる物件を明記せざるは結局何時如何なる犯罪が行
はれたるや不明にして犯罪事実につき理由不備の違法がある。右第一、第二点とも
刑事訴訟法第四百十条第一項第十九号の所謂判決に対し理由を附せず又は理由に齟
齬があるから原判決は破毀を免れない」というにある。
しかし、本件におけるがごとく連続一罪を構成する数個の詐欺の事実を判示する
に当つては、必ずしも各個の犯罪行為を逐一個別的に明確に説示することを要する
ものと言うことはできない。その行為の内容の表示は、同一罪質を有する複数のも
のであることを理解し得べき程度に具体的になされるをもつて足るのである。すな
わち、行為の始期及び終期を明かにし、各個の行為に共通する詐欺の手段、贓物、
贓額その他を一括する等の方法をもつて、数個の行為を総括して表示すれば事足る
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と言うことができる。
従つて、所論の原判決表示には、必ずしも所論のように判決に理由を附せず又は
理由に齟齬があるという違法が存するものではない。論旨は理由なきものである。
よつて、刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。
この判決は、裁判官全員の一致した意見である。
検察官橋本乾三関与
昭和二三年四月八日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 真 野 毅
裁判官 沢 田 竹 治 郎
裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 岩 松 三 郎
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