大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和22(れ)21 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人豊田安五郎上告趣意第一点は「原判決は被告とAはB方に押入り互に殺人

行為を分担し同人を殺した後金品を奪う約束をして共謀の上同人方に行つたから被

告を強盗殺人罪の共同正犯であるとし其の証拠として原審公判廷に於ける被告の供

述第一審に於ける相被告人Aの供述を援用しているが、右証拠を被告に対し不利益

にのみ帰せしむるため分割使用している。右供述によれば判決理由にもある通り前

記B方に行き寝ていた同人を起し小豆を種に云々とある通り被告に関する限り初め

のような殺人の故意は抛棄してその故意のなかつたことは明かである(記録三一五

丁、三七二丁裏御参照)若し被告に殺人の故意があれば争つているBの左手をバン

ドからはずすだけの手伝ひでその目的は達せられた筈である。」というにある。

しかし、原判決においては被告人は第一審相被告人Aと共謀の上本件犯行を犯し

たことを認定したものであつて該認定はその挙示する証拠に照らし肯定し得るとこ

ろである。必ずしも所論のように被告人が中途殺人の故意を抛棄したものと認めね

ばならぬとはいえない。論旨は結局原審の専権に属する証拠の取捨判断を非難する

に帰着するから上告は理由がない。

同上告趣意第二点は「被告人に強盗殺人未遂の責を負はせるためには現に犯罪行

為に手を下してない被告は強盗の点につき共謀しただけでは足りぬ殺人の故意のあ

ることを要する。被告の故意を認めるには殺人行為の方法が明でなければならぬ。

原判決によれば被告はBの頭を石で殴つて殺すことになつている。ただ単に石で頭

を殴つても致命傷を与へられるとは限らない大きさ、形状にもよるし使用の方法に

もよる、然るに判決証拠中には之れを肯定する資料がない、却て予審の被告訊問中

には石は三、四寸のものでポケツトに入れていたとの供述がある(記録二二〇丁参

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照)審理不尽である」というにある。

しかし、原審が審理の末引用した証拠によれば被告人は、強盗の点のみでなく殺

人の点についても、第一審相被告人Aと共謀した事実を認めうるから、原判決には

所論のような審理不尽の違法はない。

同上告趣意第三点は「原判決は、露店飲食店B(当三十一年)方に押入りAは右

Bの頸を絞め被告人はこれに手伝つて石で頭を殴り同人を殺してその金品を奪はう

と共謀の上説示し事情の変化に言及せず共謀の上同日午前四時頃前記B方に行き寝

ていた同人を起しAが小豆を持つて来たと言つて新聞紙等を入れた風呂敷包をBの

前に置き同人がこれを取ろうと手を伸ばした瞬間Aは用意して行つた革製バンドを

矢庭に同人の頸に巻きつけ云々必死に争つたためA及び被告人の両名は強盗殺人の

目的を果さなかつたものであると簡単に被告人にAと同様な罪責ありとせられる。

然し被告にとつては其の間の続きは重大な事情の変化である心境にも変化あるべき

は当然だ(記録三七二丁裏、三一五丁、二五五丁参照)被告人は犯行の場所に居た

だけでそれだけでAの犯行を強めたとするも従犯の域に過ぎない事情の変化を認め

ながらなお被告人の犯意を認定するには其の旨の説示があつて然るべきである。原

判決は理由不備である。」というにある。

しかし、原判決は、被告人が強盗殺人の故意を以て第一審相被告人Aと共謀して

判示犯行をした旨説示しており、強盗殺人未遂の判示として何等欠くるところがな

い。従つて所論のような点について説示しないとしても理由不備の違法ありと言い

得ない。

弁護人吉崎勝雄上告趣意第一点は「相弁護人ノ上告趣旨ヲ全部援用シマス(一)

特ニ本弁護人ヨリ強調シタク存ズル点ハ原審判決書ノ理由不備ノ点デアリマス原判

決ハ情状ヲ酌量シ懲役四年ノ刑ヲ言渡スト説示シテ居ルノデアリマスガ事実理由ニ

於テハ何故ニ情状酌量サレタモノナルカヲ窺知スル事ガ出来ナイノデアリマス即チ

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原判決ハ被告人ガ相被告人ト共謀シタ事ノ説示ハアルノデアリマスガ被告人ガ如何

ナル行為ヲナシタルカニ付テノ説示ハ一語モナイノデアリマス、凡ソ犯罪事実ノ認

定ニハ其ノ行為ノ説示ヲ要スベキ事ハ多言ヲ要サヌノデアリマシテ本件ノ如キ共犯

事実ノ認定ニ於テモ共謀事実ノ説示ノミニ依テハ未ダ犯罪事実ノ説示トシテハ足ラ

ヌモノアルト存ズルノデアリマシテ特ニ本件ニ於テハ被告人ハ前示ノ様ニ其ノ情状

ヲ酌量サレ第一審ヨリモ軽イ刑ノ言渡ヲ受ケテ居ルノデアリマシテ斯ル場合ニ於テ

ハ特ニ其ノ犯罪事実ヲ説示スル必要ガアルコト多言ヲ要シナイト存ズルノデアリマ

シテ斯ル点カラ先ズ原判決ハ理由不備デアルト確信スル次第デアリマス。」という

にある。

しかし、情状酌量は原審の専権に属することであつて、特に情状酌量の事由を具

体的に判示する必要はない。又共謀の上犯罪を実行した場合には、共犯者の一人が

行為の実行を全然分担しなくともその責に任ずべきものであるから、判決に共犯者

各自の行動を一々判示するの必要はない。原判決は被告人が第一審の相被告人Aと

共謀の上、Aに於て判示犯行の実行に着手しこれを遂げなかつた事実を判示し被告

人を判示犯罪の共犯に問擬したものであるから本件犯罪事実の説示として何等欠く

るところがない。従つて原判決が被告人の実行行為を全然判示せず又は被告人が何

故に情状酌量されたかを窺知し得る程度に事実理由を判示しなかつたとしても理由

不備の違法ありと言い得ない。又相弁護人の上告趣旨を援用しているが、その何れ

もが理由なきことは前述のとおりである。

同上告趣意第二点は、「原判決ハ被告人ヲ共同正犯ナリト認定シタノデアリマス

ガ記録ヲ閲シマスノニ被告人ニハ共同正犯ノ意思モナク又其ノ行為カラ見テモ殺意

ヲ認メルコトハ出来ナイノデアリマス、即チ小サナ石ヲ持ツタニ過ギナイノデアリ

マシテ相被告人ノ命ズル儘ニ其ノ石デ被害者Bヲ打ツタトシテモ傷害ノ程度以上ニ

ハ出デナイノデアリマス記録第二百十七丁等ヲ閲シマシテモ被告人ノ前示ノ意思等

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ガ明カデアリマシテ何卒若年者ノ事デモアリマスシ御院ニ於テモ御慎重ナル御審議

ヲ特ニ御願ヒシマス」というにある。

しかし、原判決引用の証拠によれば、被告人の本件共謀の事実を十分認め得られ

る。所論は、その点について原審の事実誤認を主張するものであるから、上告適法

の理由とならない。

よつて、刑事訴訟法第四百四十六条に則り主文の如く判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

検察官松岡佐一関与

昭和二十二年十二月四日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 真 野 毅

裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 岩 松 三 郎

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