最高裁判所第一小法廷 昭和22(ク)7 決定
主 文
本件抗告を却下する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理 由
裁判所法第七条によれば、最高裁判所は、上告の外「訴訟法において特に定める
抗告」について、裁判権を有するのであるが、ここにいう「訴訟法において特に定
める抗告」とは、日本国憲法の施行に伴う民事訴訟法の応急的措置に関する法律第
七条又は日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律第十八条に
定めた抗告のように、訴訟法において特に最高裁判所の権限に属するものと定めら
れた抗告をいうのである。訴訟法にかような特別の定めのあるものを除いては高等
裁判所の決定及び命令に対する抗告は、その中に含まれないものと解されなければ
ならない。けだし、裁判所法中、高等裁判所の裁判権を定めた第十六条第二号には
「第七条第二号の抗告を除いて、地方裁判所の決定及び命令に対する抗告」とあり、
又地方裁判所の裁判権を定めた第二十四条第三号には「第七条第二号の抗告を除い
て、簡易裁判所の決定及び命令に対する抗告」とあるのに対比すれば、若し最高裁
判所の裁判権が一般的に高等裁判所の決定及び命令に対する抗告を含むものとする
ときは、最高裁判所の裁判権を定める第七条第二号には「高等裁判所の決定及び命
令に対する抗告」と定むべきであり又さように定めたであらう。そればかりでなく、
高等裁判所が第一審又は第二審としてした決定及び命令に対する抗告に限るか、又
は高等裁判所が第三審としてした決定及び命令に対する抗告をも含むかについて、
明かに定むべきであつたろう(裁判所構成法第五十条参照)。しかるに、同条には
単に「訴訟法において特に定める抗告」とのみいつて、原審裁判所等を全然掲げな
い特殊の表現を用いている点から見れば一層その意義を前述のように解する外はな
いことになるのである。かような字句は、従来裁判所の裁判権を定めていた裁判所
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構成法第二十七条、第三十七条、第五十条にも用いられていなかつた全く新しい特
殊な表現であつて、その「特に」の意義は、特に最高裁判所の権限に属するものと
定められた抗告を意味するものであることは、かかる沿革に照してもなお窺い知る
ことができる。更に又裁判所法第八条には「最高裁判所はこの法律に定めるものの
外、他の法律において特に定める権限を有する」とあるが、ここに「特に定める権
限」とは特に最高裁判所に属すると定められた権限を意味することは、まことに事
理明白であつて、その「特に」の意義は、この場合も第七条第二号の場合も全く同
一である(なお、第十七条、第二十五条、第三十四条参照)。
要するに、裁判所法は一方において最高裁判所の使命任務の重要性に鑑み、他方
においてその負担を軽減するため、一般的に見て比較的重要でない抗告について上
訴の制限を設けたものと解するを相当とする。そして、訴訟法の応急的措置に関す
る前記各法律において、憲法適否の問題についてのみ特に最高裁判所に抗告する道
を設けたものである。なお現在その他の法律において、特に最高裁判所に抗告を許
している規定は、存在していない。さて、本件についてみるに、その抗告理由は、
原決定において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについてし
た判断が不当であることを問題としているものでないことは、抗告状及び抗告理由
書自体により明かである。それ故、本件抗告は、不適法として却下すべきものとし、
抗告費用を抗告人に負担せしめ、主文のとおり決定する。右決定は裁判官全員の一
致した意見である。
昭和二十二年十二月二十四日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 眞 野 毅
裁判官 澤 田 竹 治 郎
裁判官 齋 藤 悠 輔
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裁判官 岩 松 三 郎
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