最高裁判所第一小法廷 昭和23(れ)1517 判決
主 文
本件各上告を棄却する。
理 由
弁護人遠山丙市、同持田五郎上告趣意第一点について。
原判決は、酌量減軽をするに当り刑法第六六条、第六八条の規定を適用している。
それは、当然に所論の刑法第七一条の規定の適用せられたことを示しているものと
いうことができる。およそ刑法総則の規定は、これを適用している趣旨が窺われる
限り、必ずしも明らかにその規定を引用していなくとも法律理由の不備を来たすも
のではない。論旨は、それ故に理由なきものというべきである。
同第二点について。
論旨は、酌量減軽の場合に適用せられる刑法第六八条第三号に「有期の懲役又
は禁錮を減軽す可きときは、其の刑期の二分の一を減ず」とある規定は、刑罰各本
条の掲げる刑の範囲内において量定した量定刑の刑期を二分の一に減軽する趣旨を
有すると主張するのである。しかし、同条は、所論量定刑を定める目的を以て「刑」
すなわち法定刑又は法定刑の加重刑(同法第七二条参照、なお本件酌量減軽の場合
は同法第七一条、第七二条により再犯加重、法律上の減軽及び併合罪の加重をした
処断刑)を減軽する方法を規定したものである。詳言すれば法定刑を減軽する場合
における同条同号の減軽の方法は、先ず刑法各本条の刑期(法定刑)の長期と短期
とを二分の一に減軽し、然る後その範囲において刑の量定をすべきものである。す
なわち、法定刑を基本として減軽による処断刑を定め、この処断刑を基準として量
定した量定刑を宣告することとなるのである。このことは、刑法第六八条第五号で
「其長期の二分の一を減ず」といい、同第六号で「其多額の二分の一を減ず」とい
つているのと対照して考えてみれば、容易に理解することができるであろう。そし
て、かく解することによつて、実質的にも何等不都合を生じないことは、明白であ
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る。されば所論は、正に、その目的と手段との本末を顛倒したものといわねばなら
ぬ。論旨は、それ故に理由がない。
同第三点について。
記録を調べてみると、所論の原審第四回公判調書中における毛筆による約三行
に亘る文字の記載は、謄写版による不動文字に接属して普通に記載せられたもので
あつて、挿入せられた文字でないことは、一見明瞭であるから、刑訴第七二条によ
る認印と挿入字数の記載のないのは、当然であるといわねばならぬ。仮りに、これ
を挿入文字であるとしても、文章前後の関係や前後の墨色筆勢等に照らし合せて、
同一人たる権限ある書記の作成に係るものであることは、明白であるからたとえ認
印と挿入字数の記載がなくとも該記載部分又は公判調書の無効をきたすことはない
のである。論旨は理由がない。
よつて旧刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
検察官 十蔵寺宗雄関与
昭和二四年二月二四日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 真 野 毅
裁判官 沢 田 竹 治 郎
裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 岩 松 三 郎
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