大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和23(れ)1676 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

仙台高等検察庁検事長代理検事山田義篤の上告趣意について。

所論原審第三回公判調書の記載によればA、B、C、D、E、F、G、H等八

名の証人が右列記の順序に尋問されたこと、そして所論B等三名の証人尋問に関す

る部分にいずれも「後に尋問すべき証人の居らざるところにおいて……」の記載が

あるに拘らず、証人A及びEの尋問に関しては、かかる記載の存しないこと、又証

人Dの尋問終了の部に「裁判長は後に尋問すべき証人の居らざるところにおいて証

人に対し尋問終了の旨を告け、被告人両名に対し右証言について意見かあるかない

かを問うたところ……」の記載があることは、論旨の指摘する通りである。しかし、

公判期日において証人が各別に尋問されたか否かということは、公判調書の必要的

記載事項ではないから公判調書に右の点に関する何等の記載がないとしても、これ

を目して違法といい得ないことは勿論、この一事から直ちにその証人が各別に尋問

されなかつたという事実を推断することはできない。論旨は右調書の記載によれば

一部の証人尋問に関しては、特に「後に尋問すべき証人の居らざるところにおいて」

と明記しながら、他の証人の尋問についてかかる記載をしなかつたのであるから、

その記載なき証人の尋問は後に尋問すべき証人の面前でなされたものと認むべきで

あると主張するのである。しかし、右「後に尋問すべき証人の居らざるところにお

いて」なる記載はその記載の形態自体によつて明白であるように、すべてが爾後の

挿入にかかるものであつて、証人Aの尋問について、その記載のないのは、特にこ

れを記載しなかつたものではなく、むしろ右の挿入を遺脱したに過ぎないとも考え

得るのであり、又証人Dの訊問終了の際に関する所論記録第一〇八三丁表の記載は、

同丁五行目に存する「裁判長は証人Eに対し……」とある「裁判長は」の次に挿入

- 1 -

すべきであつたのを過つて同丁一行目の「裁判長は」の次に挿入したため論旨摘録

のような不可解な記載となつたものと思われるのである。されば右調書の記載だけ

から、必ずしも論旨主張の結論を抽き出すことはできないのであり、従つて所論証

人等が後に尋問さるべき証人の面前で尋問されたことを前提とする論旨は採用の限

りでない。

よつて旧刑訴四四六条に従い主文の通り判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

検察官 十蔵寺宗雄関与

昭和二四年九月二二日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 岩 松 三 郎

裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!