最高裁判所第一小法廷 昭和23(れ)1734 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人渡部信男の上告趣意について。
原審において論旨摘示のような訊問、応答のあつたことは所論のとおりである。
しかしその摘示自体で明らかなようにかゝる訊問、応答を以て所論のように有罪の
先入観に基く不公平な訊問又は強制による自白であると解することはできない。そ
して憲法第三七条第一項にいわゆる公平な裁判所とは偏頗のおそれのない公平な組
織構成の裁判所を指すものであること当裁判所の判例とするところである。されば
論旨第一点及び第二点は採ることができない。また、刑の執行猶予を為すか否かは、
刑の言渡を為すべき原裁判所が刑罰の特別予防の目的の外一般予防の目的をも考慮
して決すべき任意事項であるから、論旨第三点は上告適法の理由とならない。
弁護人大橋茹の上告趣意について。
しかし、原判決は、判示事実を認定するのに、原審における被告人の供述の外相
被告人の判示同趣旨の供述並びに判示関係部分に照応する買受人の始末書又は聴取
書の記載又は供述記載をも証拠として採用している。そしてこれらの証拠を綜合す
れば、判示事実を肯認することができるから、原判決には、所論のように自白を唯
一の証拠とし又は証拠理由の不備若しくは齟齬の違法は毫も存しない。論旨は、そ
の理由がない。
弁護人荒谷昇の上告趣意第一点について。
しかし憲法第三七条第一項にいわゆる公平な裁判所とは、偏頗のおそれのない公
平な組織、構成の裁判所を指すものであることは当裁判所の判例とするところであ
る。そして、裁判所は、検察官の附帯控訴に何等拘束されるものではなく、本件に
おいても原審は、附帯控訴を認容しなかつたのであるから、所論は原判決に副わな
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い主張であつて、採るを得ない。
同第二点について。
第一審の判決に対し、第一審の検察官及び被告人はともに控訴をすることができ
る。また、被告人の法定代理人若しくは保佐人等又は、原審における代理人若しく
は弁護人は、被告人のために控訴をすることができる。そして、旧刑訴第四〇三条
によれば被告人控訴をした事件及び被告人のために控訴をした事件について裁判所
は第一審判決の刑より重い刑を言渡すことを得ないものであるが、被告人は、検察
官が控訴をした場合でも弁論の終結に至るまで何時でも無罪又は第一審判決よりも
軽い刑を求めることができるものである。それ故この後の場合被告人に対し特に検
察官の控訴に附帯して自己に有利な判決を求める権利を与える必要がない。然るに
控訴審の検察官は事件送致の後原判決の刑を不当と認めたときでも原審検察官が控
訴をした場合の外右旧刑訴第四〇三条の規定の制限を受け原判決の刑より重い刑を
求めることができない。従つて控訴審の検察官は、当事者対当の見地から見て、被
告人に比し著しく不利な立場に在るものといわねばならぬ。されば、立法者は、旧
刑訴第三九九条の制定に際し、旧刑訴第二五九条に「控訴ノ相手方ハ其ノ判決アル
迄附帯控訴ヲ為スコトヲ得、控訴裁判所ノ検事モ亦附帯控訴ヲ為スコトヲ得」とあ
るを改め「控訴裁判所ノ検事ハ弁論ノ終結ニ至ル迄附帯控訴ヲ為スコトヲ得」と規
定して、控訴審の検察官のみに対し特に附帯控訴の権利を与え、前記不利益変更禁
止規定を打破する途を開き、かくして控訴審における検察官を被告人と対当の地位
に置いたのである。従つて控訴審における検察官の附帯控訴は、所論のごとく刑事
訴訟における当事者対当の原則に反するところは全然存しない。そして、附帯控訴
の制度を認めるか否かは、刑事訴訟法の内容の当不当の問題で憲法適否の問題でな
く、旧刑訴第三九九条の規定は憲法違反ということができないことは、夙に当裁判
所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第二二四号同年二月二四日大法
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廷判決参照)論旨は、その理由がない。
よつて旧刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
検察官 宮本増蔵関与
昭和二四年三月二四日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 沢 田 竹 治 郎
裁判官 真 野 毅
裁判官 岩 松 三 郎
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