大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和24(れ)1137 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人岸本鋭次郎上告趣意第一点について。

しかし、銃砲等所持禁止令第一条違反の犯罪は、所定の刀剣類を所持するを以て

成立し、たゞその所持当時同条但書の事由あるときはその犯罪の成立を阻却するに

過ぎないものである。されば刀剣の所持当時同条但書所定の許可がない以上、たと

い許可申請の意思があり、しかも不可抗力的事由で許可申請をすることができなか

つたからといつて、犯意なしといえないのは勿論既に成立した犯罪を消滅又は変更

せしむる理由もない。そして、所論昭和三四年三月一〇日附第八軍司令部AP0三

四三発、書簡、「刀剣の所有権移転に関する件」は、武器所有者において止むを得

ない事由があつて規定された期限内に所有、登録の許可申請をすることができなか

つた場合に、そのできなかつたことの完全且つ簡潔な釈明書を附して申請したとき

には警察当局において、その釈明を真正であり且つ情状酌量すべきものと思料する

ときは期限後と雖も申請者に対し銃砲等所持禁止令違反として検挙その他懲罰手段

に出てはならないという警察当局に対する指示に過ぎないものであつて、かゝる許

可申請をしたときは、既に成立した刑罰を廃止、変更又は免除する法律効果を生ず

るものとした裁判所に対する指令ではない。それ故所論は採ることができない。

同第二点について。

しかし、原審公判調書によれば、被告人は、原審公判廷において、本件不法所持

の事実を終始自認し、ただ犯情として「不法で刀剣を所持して居ては罰せられると

思いましたのでA方から刀鎗合計三一振を持つて帰ると同時に和歌山県刀剣審査委

員B様にその手続を経る相談をしたのでありますが未だに何の返事もなく、私とし

てもその手続がはつきりわからなかつたのでその儘になりました」との供述を為し、

- 1 -

弁護人もまた明らかに「本件犯罪の情状の点について本日在廷している刀剣審査委

員Bの訊問を請求」したに過ぎないものであること明白である。

されば原判決が右証人申請を必要ないものとして却下し、被告人の供述を採つて判

示事実を認定し、第一審判決の刑を軽減して主文の刑を量定したからといつて、所

論の違法ありとはいえない。本論旨も採ることができない。

よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

検察官 小幡勇三郎関与

昭和二四年九月二九日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 齊 藤 悠 輔

裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 岩 松 三 郎

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!