大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和24(れ)29 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人池辺甚一郎上告趣意第一点について。

少年法が少年犯罪者はこれを保護処分に付することを主眼とし刑事処分に付する

ことを寧ろ第二義的とする法意であることは所論のとおりであるが、この法意に適

合すべく被告人の性行、境遇その他の資料にもとずき被告人を保護処分に付するか

それとも刑事処分に付するかを決定するのは事実審たる原裁判所の裁量権に属する

ところである。従つて仮りに被告人の性行、心境その他の事情が所論のとおりであ

るとしても原審が被告人を保護処分に付しないで、刑事処分に付したからといつて、

違法であるといえない。所論は結局原審の自由裁量に属する判断を非難するに帰着

するから上告適法の理由とならない。

同第二点について。

しかし、被告人が窃取した物件の一部が被害者に還付されていることは記録第八

丁の還付請書で原審に明らかなところであり、被告人の勾留が不当に長いものでな

いことは論旨第三、四点で説明するとおりであるし、被告人がかつて肺浸潤を病み、

まだ全治するに至つていないことと被告人の保護者として父兄のあることは、いづ

れも原審で取調べずみであることは記録上明らかである。

なお被告人が犯行当時心神耗弱者であつたという点については被告人も弁護人も

原審でも第一審でも問題とした形跡すら記録上に存在していない。されば原審は被

告人に利益の点についての取調をしていなければ斟酌もしていないという所論は当

らない。しかのみならず憲法第三七条第一項にいわゆる公平な裁判所の裁判という

のは個々の事件につきその内容実質が具体的に公正妥当なる裁判を指すものではな

い(昭和二二年(れ)第四八号同二三年五月二六日大法廷事件判決参照)から、所

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論は上告適法の理由とならない。

同第三点及第六点について。

しかし記録によれば被告人は昭和二三年六月五日勾留状を執行されてから、一月

もたたない同年七月一日に開かれた第一審第一回公判廷において原審公判廷におけ

る自白と同趣旨の自白をしているから、原審公判廷における被告人の自白は所論不

当に長く抑留若しくは拘禁後になされた自白に当るものとはいえない。又原審は公

判廷における被告人の自白と盗難被害届を証拠として判示事実を認定しているので

あつて、所論のように被告人に不利益な本人の自白だけで有罪としたのではない。

論旨はいずれも理由がない。

同第四点について。

記録を精査すると、公判請求は昭和二三年六月四日、第一審第一回公判は同年七

月一日、第一審判決言渡は同月八日、被告人の控訴申立は同日、訴訟記録が第一審

裁判所から大阪地方検察庁へ送付されたのは同年八月一八日、大阪高等検察庁から

原審へ送付されたのは同年九月、原審第一回公判は同年一〇月二三日、原判決の言

渡は同月二九日であることが認められる。されば原判決は公判請求の日から僅々五

月たらずで言渡されているのであるから現時の下級裁判所における刑事事件の輻輳

している実状に照して原判決をもつて迅速でない裁判であるとすることはできない。

しかのみならず、仮りに審判が迅速でなかつたとしても、それを違憲として原判決

を破棄して更に審判を求めることの許されないことは当裁判所の判例とするところ

である(昭和二三年(れ)第一〇七一号同年一二月二二日大法廷事件判決同年(れ)

第一六三二号同二四年三月二四日第一小法廷事件判決参照)から論旨は採用するを

得ない。

同第五点について。

しかし、第一審又は第二審における未決勾留日数の全部又は一部を本刑に通算す

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るか否かは事実審たる原裁判所の自由裁量に属するところである。しかのみならず、

本件の審判が迅速を欠いたものでないことは第四点において説明したとおりであり

更に又未決勾留日数を全部本刑に通算するのが憲法の精神であるなどということは

同法のどの条文からも推断し得ないところである(昭和二二年(れ)第一〇五号同

二三年四月七日大法廷事件判決参照)から未決勾留日数を本刑に通算しなかつたか

らといつて原判決にはいささかの違法もない。論旨は理由がない。

よつて旧刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

検察官 小幡勇三郎関与

昭和二四年五月一九日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 岩 松 三 郎

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