大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和24(れ)2905 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人伊達利知上告趣意第一、二点について。

昭和二二年勅令第九号は婦女の個人自由の伸張を図るため、「暴行又は脅迫によ

らないで婦女を困惑させて売淫をさせた者」(一条)及び「婦女に売淫をさせるこ

とを内容とする契約をしたもの」(二条)に対する処罰を定めている。所論は、こ

の後者の場合において「当該婦女側には契約なかりせば売淫せざりしなるべしとの

関係の存在すること」を絶対必要要件とすると主張している。これは一種の独創的

な興味ある法律見解を提示したものと言うことができよう。しかしながら、「婦女

に売淫をさせることを内容とする契約」の当事者の一方には必ずしも常に売淫をさ

せられる婦女があるというわけではなく、該契約の当事者の双方が売淫をさせられ

る婦女以外の男女であることもあり得る。そして、かゝる契約は、その当事者が誰

であるにせよ、結局において直接又は間接に多かれ少かれ婦女を束縛又は強制して

売淫をさせる結果を招来するに至るものであつて、婦女の個人自由の伸張を阻害す

ることは昭として白日を見るよりも明らかである。されば、所論のごとき必要要件

の有無にかゝわらず婦女に売淫をさせることを内容とする契約をした者は、一様に

処罰さるべきものと言わねばならぬ。また、実際上からいつても所論に従つて売淫

常習者とかゝる契約をすることが処罰の外におかれることとなつては二条所期の取

締目的は達成することを得なくなるであろう。(なお所論警察犯処罰令は本件犯行

前の昭和二三年五月二日から廃止されている。)論旨はそれ故に採ることを得ない

のである。

よつて旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

- 1 -

検察官 安平政吉関与

昭和二五年三月一六日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 岩 松 三 郎

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!