大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和24(れ)356 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を東京高等裁判所に差戻す。

理 由

弁護人茂手木豊治上告趣意第一点について。

原判決は被告人が昭和二二年一二月二八日判示公職追放の仮指定を受け同月三〇

日官報を見てその指定のあつた事実を知りながら、異議の申立を為すことなく昭和

二三年二月一八日公職を失うに至つたにかかわらず引続き同年六月二三日迄従前の

勤務先における執務の場所に出入したる旨認定し、これが証拠として被告人の原審

公判廷における供述その他を挙示してゐる。そして被告人は原審公判廷において、

原判決の挙示した「特に官報を見る為に同月三〇日税務署に行き同月二八日の官報

各頁の軍曹欄を調べて見た、調べた時間は約三十分前後であつた」「私は執務につ

いては緻密で一生懸命にやる方である」との供述をしたことは明らかであるが、そ

の供述全体の趣旨は、復員後税務署に勤めるとき、軍歴は特に必要ないだろうと云

われたので書かずに履歴書を提出したが、昭和二一年七月A署長の時軍歴調査があ

つた時軍歴(記録三八丁参照)を書いて差出し、同二二年一一月末から一二月上旬

頃に、新聞かラジオで憲兵隊関係の氏名が全部仮指定になつて発表され本人には通

知しないことを知り、特に右のごとく官報を見たが、自分の名前が載つていなかつ

たので、喜んで家に帰り、三級官は資格審査がなかつたのだと一方的に解釈し、翌

一月上旬頃B係長に話したところ、仮指定にならなかつたら心配はないから一生懸

命に仕事をして下さいと言われ、爾来引続いて勤務していたとの趣旨の供述をした

もので、しかもほぼこの供述を裏書する立証をしてゐるのである。従つて原判決摘

示の被告人の供述部分は、寧ろ被告人が仮指定の事実を知らなかつた有力なる反証

と見るが相当である。しかるに原判決が被告人のその前後の供述部分を無視抹殺し

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て全然反対の立証趣旨にこれを供したのは、実験則に反して事実を認定した違法が

あるものといわざるを得ない。本論旨は結局理由があつて原判決は破棄を免れない。

よつて上告趣意第二点については説明を省略し、旧刑訴第四四七条及び第四四八

条の二第一項により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致した意見である。

検察官 小幡勇三郎関与

昭和二四年三月二四日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 沢 田 竹 治 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 岩 松 三 郎

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